| Report-6 |
3万社近い企業情報をWebで提供
全就職講座の評価をフィードバックし改善する |
| 企業の業種や規模はもちろん、業務内容や本社所在地、求人内容、卒業生の採用実績の有無などから目的に合った企業を探す。神奈川大学では今年度から、豊富な検索機能を持った企業データベースの運用を開始した。登録した学生には個別に求人情報を送るなど、きめ細かな支援を行う。就職講座では、毎回学生アンケートを実施し、講座内容の改善を図っている。 |
| 豊富な検索機能を備え独自の情報とリンクさせる |
| 神奈川大学では以前から学内のイントラネット上で企業データを公開していた。だが、求人情報にはリンクしておらず、学生からの「夜、自宅で企業情報や求人票を検索できるようにしてほしい」という要望に応え「KUキャリアナビ」を立ち上げたと、就職部就職課の明比（あけひ）卓課長は説明する。 |
KUキャリアナビの「条件からの検索」画面
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KUキャリアナビは、登録した学生だけが閲覧できるWebサイトだ。同大学が紙ベースで持っていた約2万3000社のデータに新規データを付け加えて、3万社近い企業データを提供する。資本金や従業員数、売上高などの通常の企業情報はもちろん、神奈川大学のオリジナルデータが加わっている点が特徴だ。
一つは求人情報だ。就職部に寄せられる求人情報を随時入力する。対象学科や卒業年次（年齢制限）のほか、求人数、セミナー情報、エントリー方法、企業のURLなど、必要な情報はすべてKUキャリアナビから閲覧できる。もう一つは卒業生の情報で、どの学科からいつ、何人入社したのかが一目で分かるようになっている。
掲載する情報量が膨大だと、目的の情報にたどり着くまでの苦労も多い。だが、KUキャリアナビでは豊富な検索機能を搭載することでその問題をクリアしている。検索パターンは大きく4種類ある。
まずは「条件からの検索」だ。会社名、業界、業種、従業員数、規模などの条件で検索できることは当然だが、事業内容からも検索できる。たとえば「自動車」と入力すると、自動車メーカーはもちろん、自動社部品のメーカー、輸入会社、ディーラーなど、自動車に関連した事業を行う企業がすべて抽出される。さらに求人対象学科や求人職種、卒業生の在籍の有無などの条件を加え、かなり絞り込んだ検索が可能だ。
また、「セミナー情報からの検索」では、希望業種、セミナー日程などから、参加可能なセミナーを実施する企業を検索でき、「新着求人情報からの検索」では、業種、職種、求人票が到着した期日などから企業を選ぶことができる。このほか、理工系学部の学生を対象とした「学校推薦からの検索」機能もあり、推薦学科や職種などから求人企業を探すことができる。
近年、大半の学生は就職情報を入手するために、就職情報媒体などのWebサイトを使用する。明比課長は、「毎年、大量の求人が寄せられる2、3月は、リクナビや日経就職ナビでも十分な情報が得られます。しかし5月以降、企業の採用活動が一段落してからは、本学への詳細な採用情報を掲載したKUキャリアナビの情報が生きてくる」と話し、情報の速い全国規模の媒体と競争せずに、住み分けていく方針を説明する。 |
| 学生の評価に応じて講座内容や講師を再検討 |
就職講座も充実している。3年次の7月から本格スタートし、10月初旬から12月にかけてはほぼ連日のように就職講座や支援イベントが行われる。
講座内容は多岐にわたる。基本となるのは「就職実践講座」で、今年度は全15回開催される。就職部の職員や外部の人材コンサルタントなどの著名な講師が、就職活動に必要な知識や活動の仕方、活動上の注意点・ポイントなどをわかりやすく解説する。前年度の動向や先輩たちの活動実態、自己分析の方法、Uターン就職のガイダンス、エントリーシートの書き方、ビジネスマナー講習、女子のメイクアップ講座も含むリクルートファッションなど、就職活動に必要な内容をほぼ網羅する。
「業界研究講座」も業界ごとに全18回開催される。各業界を代表する企業の人事担当者を招き、業界の現状や展望をはじめ、仕事の内容、求める人材、その企業の概要について説明してもらう。
また、適性検査やエントリーシート対策模試などの「就職模擬試験」が7回、さらに面接対策など就職活動のスキルについては、「就職特別講座」が設けられる。
このほか各種公務員の採用試験の内容や対策などに関する「公務員講座」、講座を欠席した学生向けの「ビデオフォロー講座」、就職活動に限らずすべての社会人に求められる問題解決能力の育成を図る「キャリア支援講座」、就職講座の総まとめとなる「就職総合講座」などが用意されている。
特徴的なのはすべての講座について無記名のアンケートを実施していることだ。学生に「大変参考になった」「参考になった」「普通」「あまり参考にならなかった」の4段階評価とコメントを求め、講座ごとに集計。一定のレベルに達していない講座は、内容を見直すか、講師を変更する。再検討の基準は、原則として「大変参考になった」が5割以下、「参考になった」と合わせて7割以下という厳しいものだ。しかも、学内の講師だけでなく外部講師に対しても全く同じ条件を適用する。「講座内容を自己満足で終わらせないためにも常に厳しいチェックが必要です。我々職員はノウハウを蓄積していきますが、初めて就職活動に挑む学生にとっては、白紙の状態からのスタートであるという点も忘れてはならない」（就職部就職課原田浩行課長）。
アンケートは、就職部の職員の意識向上にも絶大な効果がある。常に最新の情報を把握し、プレゼン能力を高めていかなくては、高い評価を得られないからだ。「一回の講座の準備にかなりの時間を費やしますが、それでも学生に『あまり役に立たない』などと書かれる場合もある。相当なショックですが、これで職員の能力が鍛えられます」と、原田課長。就職講座は職員のOJTの場でもあるのだ。 |
| 学籍データとリンクさせ就職相談時のカルテに |
KUキャリアナビは、学生の就職活動の支援ツールだが、一方で就職部の就職指導支援ツールとしての役割も担う。学生が登録する際には、必要に応じて進路の細かな希望も記入してもらう。この就職データと学籍データの一部を関連づけてカルテ化し、学生の就職相談の際の資料とする。もちろん相談内容も記入する。
このシステムについて、明比課長は「学生の管理が目的ではなく、一人ひとりに対応したきめ細かな支援を行うためです。プライバシーに最大限の配慮をした上で、最終的には、学生部、教務部、就職部などのデータを一元化できれば」と語る。同大学では1年次から自己発見レポートを実施するなどのキャリア支援を行っているが、こうしたデータの活用も視野に入れている。また、就職課に蓄積された膨大な数の卒業生の就業報告書も、企業の現状がわかる貴重な資料としてリンクさせようという計画もある。
就職情報をカルテ化したことで全職員が学生の情報を共有できるようになり、業務の引き継ぎもスムーズになった。また、求人情報も特定の学生に向けてメール配信できるため、学生からの反応もよくなったという。
ただ、原田課長は「Webシステムだけを充実させるのも考えものです。われわれは自宅で完結する就職活動を目指しているわけではありません。KUキャリアナビは、就職部にはこんな情報があるということを認知させ、窓口に来てもらうためのツールなのです」と話し、就職活動が順調でない学生ほど、就職部に来なくなるという傾向を指摘する。「向き合って話すことで、厳しい状況に立つ学生のメンタルなサポートにもつながればいいと思いますね」。学生が職員に気軽に声をかけられる体制づくりも今後の課題であるという。 |
