ベネッセ教育総合研究所
特集 国際化教育の現在
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語学学習+異文化体験の短期プログラム

 現在、大学が提供する留学・海外研修プログラムの内容をみていく。以前は、留学プログラムは学位取得を目的としたものや交換留学で1年間(2セメスター)学ぶという長期のプログラムが中心であったが、学生が多様化し、短期間の留学を希望する者も多いため、4〜8週間の短期プログラムを設置する大学が増えてきた。
 短期プログラムは、一般的に夏休みや春休みの期間を利用して、受け入れ先の大学での語学研修を中心に行われる。事前講義として研修先の国に関するレクチャーを行い、現地では語学に加え、派遣先の国や地域の文化、社会に関連した講義を受講したり、博物館や美術館を訪れる校外学習や小旅行を行うケースも多い。滞在先も大学の施設だけでなく、現地の一般家庭でホームステイを体験させるものもある。
 派遣先は、これまで英語学習を目的とした北米やイギリス、オセアニアが圧倒的に多かったが、近年、アジアやアフリカ諸国に派遣する大学も出てきている。
 亜細亜大学は「亜細亜グローバルプログラム」にフィリピンやモンゴル、インドで語学学習を行うコースを設置。関西外国語大学はエジプト、ケニア、モロッコなどのアフリカ諸国への派遣も行う。
 立命館大学の「異文化理解セミナー」は、語学学習と異文化体験を主な目的とするプログラムだ。全学部の学生を対象とし、毎年300人以上が参加する。学生は、派遣国・地域の歴史や文化を学ぶ事前講義を受けた後、春休みを利用して約5週間のセミナーに参加。セミナー終了時に派遣先の教員に、帰国後には事前講義の担当教員へのレポート提出が義務付けられている。
 同大学はこのセミナーを海外留学の入門編として位置付けており、1年生の応募が多く、それまで海外に出たことがないという学生も少なくない。同セミナーの満足度は非常に高く、参加後、次のステップを目指し、他の長期プログラムに応募する学生も多い。また、同セミナーの受け入れ先が交換留学協定を結んだ大学である場合も多く、「セミナーで学習環境を確認できたので、安心して交換留学に臨める」という声もあるという。
 南山大学の「南山アジアプログラム(NAP)」は、体験学習を通じ、将来、学生が異文化環境においてどのようにコミュニケーションをとり、その後いかに継続的に学習するかを学ぶ、いわゆる「学習の仕方を学習する」ことを主眼とする。派遣先では、語学学習とフィールドワークを行う。事前オリエンテーションとして、異文化コミュニケーションの基礎を学ぶほか、担当教員の指導のもと、派遣先の言語、文化、社会状況の調査など、フィールドワークの準備をした後、プログラムに参加する。
 フィールドワークは、学生が日本で固めた研究計画をもとに、現地での観察や聞き込み調査を行うもので、トピックは、環境や教育など多岐にわたる。社会科学的調査の基礎練習となるほか、現地での知見をさらに広げる効果もある。
 帰国後にはフィールドワークのとりまとめや発表を行っている。
 「近年、語学科目を重視したり、授業を英語で行う大学は増加傾向にあり、既存のカリキュラムや授業を『国際化』することは可能だが、学びの場はあくまで日本であり、知識やスキルのみの享受に留まってしまう可能性もある。学内での教育と留学プログラムとをいかに有機的にリンクさせるかが重要。異文化体験を通じて大きく意識を変える学生も多い。帰国後も学生のモチベーションを持続させるようなフォローアップが大切だ」と近藤助教授は説明する。
 こうした短期間の語学学習を中心としたプログラムへの参加を、外国語科目の単位として認定する大学は数多い。


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