ベネッセ教育総合研究所
特集 国際化教育の現在
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新たな留学プログラムの開設のために

 この春、早稲田大学が国際教養学部を開設した。グローバルスタンダードに則した教育環境づくりを掲げ、学内では英語を共通語とした少人数教育を行い、1年間の海外学習を必修にするという。
 規模の大小に関わらず、留学プログラムの立ち上げや拡充には、まず、大学全体として統一された見解があるか、国際的な教育を行おうというグランドデザインがあるかどうかにかかってくる。また、中・長期計画に基づき、戦略的に運営する必要があるため、大学にそれを実現する“体力”があるかどうかも重要だ。「教職員が留学プログラムのプロであるか、また、海外に学生を送り出した時に、想定できる様々なリスクに耐えられる学内機構であるかどうかということがカギになる」と近藤助教授は説明する。
 プログラム内容は、学内と提携先大学の教育をいかに統合するか、特に留学後のプログラムとどうリンクさせるかが、学習意欲に大きく影響する。留学前の学習と留学期間中で、語学力はある程度のレベルまでは向上する。海外で身に付けた幅広い視野を、帰国後、どう伸ばしてやるかを考える必要性がある。
 「教員の専門分野によっては不可能なものもあると考えられるが、カリキュラム自体を海外の大学と互換性のあるものにすべき。また、学生の学問的なキャリアはもちろん、卒業後の職業としてのキャリアも視野に、何をどこまで教えるのかを考慮した上でプログラムを作る必要がある」

職員の役割と必要な能力

 他部門も同様だが、国際交流に関わる組織の職員はまず専門知識を持ったプロである必要がある。特に海外の大学との提携関係においては、現場の職員同士のつながりが重要になる。留学期間中は学生を相手の大学に任せることになるため、危機的状況に陥った時、相手がどのように対処してくれるかが安全確保に大きく関わってくる。担当者同士の信頼関係がなければ解決できない問題も少なくないという。
 「海外の大学関係者から『日本の大学は、国際交流部門の担当者が異動によって替わることが多く、信用できない』という声をよく聞く。いくら日本で著名な大学であったとしても、相手は大学を信用しているわけではなく、普段やりとりをしている職員を信用している。いわば、職員が大学の顔となっているといえる」(近藤助教授)
 また、留学が学生のキャリア形成にもつながることから、職員は個々の学生に合った的確な情報提供を行い、相談に応じる必要がある。「職員はアドバイザーとして教育的役割を果たす、いわば教育職員ともいえる。また、海外の教育機関では、国際交流分野は大学経営の核となるポジションであり、ヨーロッパの大学などではMA(修士号)を持つ国際教育担当職員も多い。必ずしも高度な学位が必要ではないが、高度な専門知識が必要なことは確かで、研修を行うなど、能力を高める機会を持つべき」(近藤助教授)。



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