ベネッセ教育総合研究所
教育力の時代
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1、3年次に段階的に、1カ月の企業実習を実施

 工学セミナーを動機付けとすると、「現場を知る」のが必修のプロトタイピング実習だ。1年次に年間を通じてフライス盤や旋盤などの操作、電子回路の設計・試作や放電加工など6テーマの物づくりを体験する。授業は毎回3コマ連続で行い、工作工場を使って、ベテラン教員や企業での実務経験を持つ技能者が指導に当たる。
 「現場を知らない一般学生は、先端技術などきらびやかな部分ばかりに目を奪われがちですが、工学は、金属の細工など地道な工程、努力を抜きにしては成り立ちません。それを早い段階で体でわかってもらうのも一つの目的です」(塚本副部長)
 1年次の締めくくりには、4週間に及ぶ学外実習が義務付けられている。トヨタをはじめ日立製作所、新日本製鐵など大手企業の生産部門で、社員に混じって製品づくりに携わり、企業内の勉強会に参加することもある。3年次後期にも5週間実施されるが、この時はメーカーの中枢ともいえる研究開発部門に配属され、最先端技術に触れながら製品の開発、データ解析などを行う。この場合、社外秘の情報に接することになるため守秘義務も課せられる。
 1年次からの企業での実習について塚本副部長はこう説明する。「実務経験のない一般学生に実習をさせることは、受け入れ企業にとっては業務の妨げになるのではという不安もありましたが、教育という観点に立っての指導にご協力をいただき、うまくいっています。また、工学セミナー、プロトタイピング実習と経験を積み重ね、寮生活で社会のルールも学ぶこともあって、学生も比較的スムーズに適応できるようです」。
 同大学の就職率は100%。トヨタをはじめ本田技研工業、東芝、松下電器産業など知名度の高い企業に数多く就職しており、企業担当者から「学生がよくトレーニングされている」と評されるという。1年次から、やる気とそれに伴う実践力を徹底して身に付けさせる同大学の教育システムから学ぶべき点は少なくない。


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