ベネッセ教育総合研究所
特集 リーダーシップが生きる職員組織
金沢工業大学
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事例紹介
窓口一本化で利便性を向上
金沢工業大学
 金沢工業大学では、学生生活全般に関わる事務組織を統合し、あらゆる支援を一つの窓口で提供する「ワンストップサービス」を実現。新たに「CS室」を設け、自己評価を行う仕組みも整えた。
ワンストップサービスを実現

 金沢工業大学の改革の方向性は明確だ。「学生にとって何がいいのか」という一点の実現に向け、先進的な教育改革を推進。職員組織の運営も例外ではない。
 同大学の事務局は、庶務部、学務部、入試センター、進路開発センター、学生相談室で構成される。このうち特徴的なのが学務部で、学生が入学してから卒業するまでに必要な修学に関する支援サービスをすべて引き受ける。一般に、学生への事務対応は教務課や学生課など複数の窓口で行われるのが普通だが、同大学では学務部の窓口に一本化した。
 水島雄一学務部長は、「学生が多様化し、一つの課だけでケアするのが難しくなった」と、背景を説明。修学上の相談は、カリキュラムだけでなく、課外活動や経済状況などあらゆる要素が関連する。そこで、複合的な視点から学生を支援するため、修学に関わるあらゆる部署を統合し、2000年度から学務部として発足させた。
 学務部は、カリキュラムを扱う教務課、教学面全般の点検や見直しを行う推進課、教員で組織される「修学アドバイザー」と連携する修学相談室、課外活動を担当する学友会顧問室の2課2室からなる。しかし、学生に対する窓口は一つなので、どの職員も学生のあらゆる相談に応じなくてはならない。そのためには、全職員が情報を共有する必要がある。
 そこで同大学では、様々な工夫を行った。学務部の各課と室を一つのフロアにまとめて一体感を高めるとともに、各課等のミーティング結果を全職員にメールで配信するようにした。さらに、成績状況、修学アドバイザーとの相談履歴、課外活動の記録など修学に関する一切の情報を、学務部で一元管理するシステムも立ち上げた。どの職員もこの情報をもとに適切な対応を行うことができるわけだ。もちろん、個人情報の保護には万全を期している。
 初めに対応した職員で不十分な場合には、学生を他の窓口に回すのではなく、適任の職員や教員をその場に連れてくる。このように学生を中心とする考え方を徹底することで、「ワンストップサービス」を実現させたわけだ。

学生の満足度向上のためCS室を設置

 教学面でも夢考房や工学基礎教育センターなど、革新的なプログラムを次々と開設。教学や事務におけるこれらの改革が、本当に学生のためになっているか検証する上で重要な役割を果たすのが、法人本部に設置されたCS室だ。
 同大学では、99年に「顧客満足度向上プロジェクト」、翌年には「顧客満足度向上実施プロジェクト」を発足させ、学生へのサービス向上に努めてきた。業務サービスのクオリティを高めるため、01年度からは「日本経営品質賞」の手法を使った研修も続けている。02年度には、在学生、卒業生、高校教員、企業などを対象に大規模なニーズ調査を行った。CS室は、こうした自己点検の活動の延長線上に位置づけられる。
 主な活動は、各種アンケート調査などを学生満足度という視点から分析し、その結果を教職員にフィードバックすることだ。村井好博企画調整部長によれば、その役割は「各部署のそれぞれの努力が、大学全体として望ましい方向に進んでいるのかを、第三者的に評価すること」だという。
 最近のアンケートで、興味深い結果が出た。学生の満足度は入学当初よりも2年生の方が低くなっているのだ。宿題や課題が多いことが原因だが、山岸徹CS室長は、「課題を減らすのではなく、それをやり遂げることの意味を理解してもらうようにしたい」という。うわべだけの満足度向上ではなく、学生生活の真の充実につながると考えているからだ。そのための指標づくりは、今後の課題だ。
 このほか同大学には、教授会から独立して独自に企画を遂行できる教育支援機構など、ユニークな組織が多い。大学の明確な方針のもとに、柔軟な組織運営を行っている好例といえよう。


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