非常勤講師の活用で、質の向上と財政の安定化を図る
――財政面ではどんな工夫をされているのですか。
藤本 支出については、学生の満足度に関係する項目を中心に予算をあてていく方針です。設置審からは基礎科目を充実させるよう留意事項が出されましたが、学生からはその点での不満はなく、むしろ「モバイルマーケティング」のようにより専門的な科目の設置を望んでいるようです。本学の学生は、自分の望むものを効率的に手に入れるにはどうすればいいかを熟知していますから、原則として学生の声にきちんと対応していれば満足度は高まります。そこに集中的に資金を投下し、あとは削減してしまう、これがコスト削減のコツです。企業との共同研究も徐々に増えてきていますから、今後はそういう方面からの資金提供にも期待しています。
――実務家教員を非常勤講師として多く採用しているようですが、この点も収支構造の健全化に貢献しているようですね。
藤本 講師料については、われわれが払える限界ということで協力してもらっています。決して支出を抑えているわけではありません。そのかわり、お金以外のものでお返しすることを考えています。
例えば、優秀な学生が採用できるとか、分野の異なる教員同士の人的ネットワークができるといったメリットです。また、講師には企業のトップやマネジャーとして人を動かす立場の人も多く、教えることが自分にとってプラスになることを分かっておられる人も数多くいます。
さらに、自分のビジネスではリスクが大きすぎてできないことを、大学院で学生といっしょに実験的にできるメリットもあります。われわれとしては、学生はいい就職ができた、教員はいい学生を採用できたといったように、双方が満足し、学校にも役立つ方向がベストだと考えています。
――現在、大学ではコスト削減のため非常勤講師を減らすところもあるようです。しかし優秀な教員を確保するために、むしろ非常勤講師を増やすというのも一つの方法ですね。
藤本 非常勤講師が多いのは、この分野がまだ新しくて学問として成熟していないという事情があります。優秀な教員を求めれば、どうしても実務家にならざるを得ず、そうした方々はそれぞれ一線で活躍されていますから、非常勤でお願いするしかないのです。またITコンテンツ分野はドッグイヤーと言われるほど進歩が速く、次々に最先端の技術に対応した人材を確保しなければなりません。
学生募集では多様な選択肢を提示
――大学院入試で合格できなかった人に対して、スクールの講座を紹介するなど、学生をつなぎとめる工夫もされていますね。
藤本 学生を囲い込んでいるわけではありません。すべての人を受け入れるわけにはいきませんが、学ぶ場所は大学院だけではないということを提示しています。
受験者は、いわばデジハリのファンです。しかし不合格になれば、逆に不満分子になってしまいます。それを拡散させないことが企業の正しい姿勢だと思います。いろいろなプログラムを紹介しているのは、単にビジネスチャンスの拡大ということだけでなく、長い目で見たデジハリのファンづくりという意味もあるのです。
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