独自のMBAプログラムも用意
受講生の多くは自分自身が抱えるビジネス課題解決の糸口を見つけたいとの思いから、グロービス・マネジメント・スクール（GMS）の門をたたくようだ。例えば、「マーケティング・経営戦略基礎」という科目では、全6回の授業のテーマが「マーケティング『ポジショニングとセグメンテーション』」「経営戦略『基本戦略と戦略実行スキーム』」などと示され、自分の課題と合致しているかという視点から選べる。「1科目受講したら、それが役に立ったので、他の分野の知識も吸収したいという受講生も多い」（寺西氏）。
このように履修を積み上げて体系的に学んだ場合には学位も得られるよう、イギリスのレスター大学のMBAが取得できるプログラムを用意。また、03年4月からは独自のGDBA（Graduate Diploma in Business Administration）という修了証を授与するプログラムもスタートさせた。これはMBAに相当する能力をGMSが独自に認定するものだ。能力の認定は行政ではなく、民間あるいは市場が行うべきとの考えに基づくもので、これをGMSでは「社会認知型MBA」と呼んでいる。現在約60人が、取得を目指して学んでいる。
このように、科目を“単品”でも“セット”でも提供し、受講生がニーズに合わせて利用できる点が大きな特色といえる。今後も学校法人を設立して文科省の認可を受けるという考えはないのだろうか。寺西氏は「学位も欲しいというニーズが、受講生の中にあることは事実ですし、大学院の設置は開校時から検討課題には上っている。環境さえ整えば具体的に考えたい」としている。
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スタッフが講師の力を引き出す
GMSでは、同一科目をどの講師が担当した場合でも、一定の教育の質を確保するためのしくみを構築している。講師の採用にあたっては、教務担当の専任スタッフが面接する一方、模擬授業をしてもらい能力を審査する。また、採用の条件として
（1）経営全般にわたる体系的な知識を持っている
（2）ビジネスの第一線でリーダーとして活躍している
（3）受講生の意見を引き出して議論を活性化させる能力がある
の3点を挙げている。
採用後も教育の質を確保するため、スタッフが随時教室を訪ねて授業内容をチェックするほか、プログラム修了時には、受講生による授業評価も行われる。この5段階評価の平均値が4以下になると、スタッフと講師が改善策を話し合うことになる。
これは、講師を一方的に評価しようという発想によるものではないという。寺西氏は「受講生に授業を理解してもらうことが目的で、そのために講師には十分な力を発揮してほしい。GMSが求める要件を満たす人材が、それほどたくさんいるとは思っていませんから、その方の持っている能力を最大限に引き出すことが私たちの仕事になる」と説明する。
ただし、それでも受講生の満足が得られるレベルに達しなければ、講師は契約を打ち切られる。顧客である受講生のニーズを第一に考えた、株式会社らしいシステムといえる。
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書籍が入学案内の役割も
グロービスでは、95年から「MBAシリーズ」と銘打った書籍を発行している。これは授業で使用している教材を市販用に再編集したもので、大手出版社が版元。
シリーズの企画・編集は、同社の教材開発担当チームが中心になって行っている。マネジメントの各分野を体系的に理解できるように配慮された全体構成と、タイムリーな事例をふんだんに盛り込んだ実践的な解説が特色。
読者の間では「よくまとまっている」「分かりやすい」と好評で、大学の経済学の教科書や企業の昇格試験の参考図書に指定されるなど、経営の専門書としては異例のベストセラーになっている。
こうした編集は、ビジネスの現場で今何が問題になっているのか、どんな知識が必要とされているのかを熟知しているからこそ可能となる。そのノウハウは、GMSの運営の中で蓄積されたもので、読者がその部分を読んでどう考えるかまで想定して編集しているという。読者がGMSに興味を持ち入学するケースもかなりの数に上っているといい、同シリーズが一種の入学案内の役割を果たしている。
もちろん、一般的な募集広報も行っており、新聞やホームページなどで告知して、年30〜40回の入学説明会を実施している。説明会ではケースメソッドを含む体験授業が行われ、来場者は入学後どのような授業を受けるのか肌で感じられるようになっている。
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