ベネッセ教育総合研究所
特集 高等教育分野への新規参入者たち
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対面授業より理解度が高まる仕組みも

 インターネット上では、受講生の反応を教員が把握しにくいという問題がある。このため、「教室」の片隅に「わかったボタン」を配置。教員の問いかけに対し、受講生はこのボタンを押して反応を返すという仕組みだ。教員はその数値を、パソコンのモニタ上でリアルタイムに把握できるようになっている。
 授業の内容は「わかったボタン」の数値推移、毎回授業の最後に学生に対して実施される授業評価の結果も含め、すべて記録される。教員はそれらのデータを参考にしながら、授業内容を振り返り、その後に役立てることが可能だ。
 対面授業では、教員の「わかりましたか」という問いに対し、学生は理解できていなくてもわかったような顔をする傾向がある。しかし、この「わかったボタン」を取り入れたところ、eラーニングの受講生からは「わからない」と正直な反応が返ってくることが多くなったという。教員は学生の反応を見て、より詳しく説明するなどの対応ができるので、eラーニング授業の方が対面授業より理解度を高める可能性も期待できる。
 また、教員に対する質疑応答はeメールを使用するが、そのシステムも独自に開発した。通常は返信がくるのを待つしかないが、八洲学園大学では、教員が「読んだ」「回答を作成中」といったステータスを学生が確認できる仕組みにした。システムサポートを担当する支援センターが、この質疑応答システムを常時チェックし、学生の質問を教員が見落としている場合は、連絡するようにフォローしている。
 教員の技術的負担も軽減されている。通常のeラーニングシステムでは、パワーポイントなどで授業資料を作成しなければならない場合もあるが、同大学の授業では特別な準備は不要。タブレットPCを利用して、黒板に書くのと同様に、手書きで授業ができるようになっているからだ。和田理事長によれば、「教員が書いている『間』が学習のリズムをつくっているようで、手書きの方が好評」だという。

ネット限定の募集広報でサポートの負担を軽減

 八洲学園大学では、学生募集の告知はホームページ上のみで行っており、紙媒体での広告は出していない。和田理事長は「紙媒体ではなく、インターネットという媒体を選んだだけのこと」と言うが、その背景には、eラーニングのサポート負担の軽減を図る目的もある。eラーニングでは、パソコン機器や接続環境などが多様で、ネットに接続する時点でのトラブルが起きやすい。ネットに限定した告知であれば、少なくともインターネットの基礎知識は備えた人が応募してくるわけだ。実際には、システムサポートを担当する支援センターが対応しているが、初心者ヘのフォローに忙殺される時間はぐんと減る。
 ネットの告知だけで、初年度の春学期は約200人が入学。秋学期はさらに増加する予定で、「編入受け入れが始まれば、総定員6000人を確保できる」(和田理事長)と見込んでいる。



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