ベネッセ教育総合研究所
特集 高等教育分野への新規参入者たち
PAGE 8/22 前ページ次ページ


公立大学法人制度のアウトライン
 行政の枠に縛られる財務、人事などのシステムを改善し、魅力ある大学をつくるための選択肢として、2004年度から公立大学法人制度が実施された。ここでは制度の概略を紹介する。法人化によるトップの権限強化、再編統合など公立大学の新しい動きは、大学全体の競争に様々な影響を及ぼしそうだ。
地方独立行政法人の一類型

 公立大学法人については、2004年4月に施行された地方独立行政法人法の中で、地方独立行政法人の一類型として位置づけられ、特例規定が設けられている。国立大学法人の制度化については、議論の過程で「大学が担う教育・研究の特性に配慮して自主性・自律性を担保するためには、他の独立行政法人と同じ制度をあてはめるのは適当でない」との主張が認められ、国立大学法人法という単独の法律ができた。公立大学法人についても大学側が単独法を求めたが、国立大学法人に比べると法律で規定すべき内容が少なく、単独法では法体系が複雑になるなどの理由で、地方独立行政法人の中での特例的位置付けという形で整理された。
 制度の中身は国立大学法人制度をモデルに、「学長の任命は学内の選考機関の申し出に基づいて設立団体の長が行う」「設立団体の長が中期目標を策定する際は法人の意見に配慮する」「経営と教育研究それぞれの審議機関を置く」「中期目標の期間は6年とし、地方独立行政法人評価委員会が認証評価機関の専門的な評価を踏まえて評価する」など、教育・研究に関わる大学の特性に配慮した規定が盛り込まれている(図表1)。
図表1 国立大学法人と公立大学法人の制度の比較

図表

 一方、国立大学法人制度との大きな違いとして以下の3点が挙げられる。
(1)法人化するか否かは設置者である地方公共団体が選択できる
(2)一つの設置者が複数の大学を置いている場合、大学ごとに法人化する形と、一つの法人が複数大学を運営する形のいずれも可能
(3)理事長は学長となることを原則とするが、学長を別に置くことも可能。
 (1)については、国立大学と違ってそれぞれ設置者が異なるため、主体的な判断に任せるという当然の規定だ。(3)では、国立大学法人に準じた原則を示しつつ、経営と教育・研究の責任を分離する私立の学校法人的な選択肢も設けた。分離型を前提に法人化を検討しているある公立大学の関係者は、「学長は経営のプロではないから、別の責任者を立てるのは当然。国立大学は法人化後も高等教育のプロ集団である文科省が実質的な経営の後ろ盾となるから、学長による兼務でも対応できる」と話す。
 学長・理事長一体型は、規模の小さな大学では迅速な意思決定ができる点が大きなメリットとなり得る。一方で、「トップとしての力量に欠ける人が兼務した場合、教育・経営の両方が混乱するという危険性もある」(大学関係者)との指摘も聞かれる。


PAGE 8/22 前ページ次ページ
トップへもどる
目次へもどる
 このウェブページに掲載のイラスト・写真・音声・その他のコンテンツは無断転載を禁じます。
 
© Benesse Holdings, Inc. 2014 All rights reserved.

Benesse