ベネッセ教育総合研究所
特集 高等教育分野への新規参入者たち
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設置者ごとの判断は定款で

 以上3点以外にも、地方自治の見地から設置者の判断に委ねる部分が多く、国立大学法人法に比べ緩やかな規定になっている点が特徴だ。例えば、国立大学法人と違って役員会の設置は義務付けられていない。また、国立大学法人の経営協議会には学外者を半数以上入れるという規定があるが、公立大学法人の経営審議機関については構成に関する制約がない。さらに、国立大学法人法では経営協議会と教育研究評議会それぞれの審議事項が明記されているのに対し、公立大学法人の両機関の具体的な審議事項は明記されていない。
 これら設置者の判断による部分は法人の定款として定め、議会の議決を必要とする。その後法人の設置認可申請をするが、設置者が都道府県か政令指定都市の場合は総務相と文科相による共同認可、その他の市町村や特別区であれば都道府県知事の認可を受けることになる。これとは別に、大学を設置するための学校教育法上の手続きとして文科相への申請が必要で、既存の公立大学を法人化する際には設置者変更の申請が必要になる。

05年度は6法人が誕生予定

 公立大学法人第1号は秋田県の国際教養大学で、04年度の開学と同時に法人立とした。それ以外の多くの公立大学でも、法人化の是非が議論されている。文部科学省は今年6月に全公立大学の設置者を対象に、大学の統合も含めた検討状況について調査。その結果を図表2にまとめた。

図表2 公立大学の法人化、再編統合についての検討状況

図表

 05年度には、複数の大学・短大を抱える岩手県、東京都などが法人化を目指しているが、岩手では3校を独立させたまま一つの法人の下に置くのに対し、東京では4校を廃止し新たな大学を設置する。2大学ある長崎県では、05年度にそれぞれ法人化した上で2年後に統合するという二段構えを予定している。福島県では2つの法人をつくり、医大とそれ以外の大学・短大の経営を分ける。
 法人化ではないが、広島県では、伝統校として人気が高く女子大のままでの存続を求める声が強かった県立広島女子大学を、広島県立大学、広島県立保健福祉大学と統合する。広島市内から高速バスで90分かかる現県立大学の経営系学部が市内の交通至便な現女子大学キャンパスに移るため、男子受験生を中心に注目を集めている。経営系学部を持つ市内の私立大学は新たに公立大学との競合を迫られるわけだ。
 公立大学法人のうち国際教養大学と大阪府立大学は理事長・学長一体型を採用。岩手県立大学等、横浜市立大学、北九州市立大学などは分離型となっている。
 これら以外にも、法人化を視野に入れながら大学のあり方を検討している大学は多い。03年末に公立大学協会が学長を対象に行ったアンケート(回答数71)では、法人化を「検討している」と答えたのが38%、「検討する計画がある」は28.2%で、合わせると全体の3分の2に上る。
 将来構想検討のための組織を設置した大学はその時点で53校あったが、その構成員は「大学関係者のみ」が72%を占め、「大学関係者+設置者」は9%にとどまる。ある公立大学の幹部は、「本来なら設置者である自治体が議論を主導すべきで、大学内部だけで決められる問題ではない。ここに、経営という概念に乏しい公立大学の問題が象徴的に表れている」と指摘する。



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