ベネッセ教育総合研究所
特集 高等教育分野への新規参入者たち
 
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課題への対応策を提示し、判断は各設置者に委ねる

 新組織の特徴は、調査・研究を担うようになったこと。加盟大学からテーマについて要望を募り、それを整理した上で、緊急性があり、かつ多くの大学に共通する課題について、委員会を作って研究している。その成果は毎年必ず報告書などの形でまとめられ、全大学と設置者に速やかに提供される。
 例えば、教育改革をテーマにした委員会は、京都府立大学の学長を委員長とし、加盟大学の総長・学長と大学評価・学位授与機構の教授が参加。加盟大学の教員、学生部長、企画課長、国立大学の研究者らによるワーキンググループが調査・分析にあたった。報告書では、「公立大学の特性を生かした教育内容」として、「設置自治体の重要課題をテーマとする講義や演習」「地域社会のフィールドワークを主とするカリキュラムの開設」などを例示している。
 「大学の知恵を結集することで、共通の問題解決や、より良いアイデアを示せるはず」と宮澤事務局長。ただし、「報告書で示した内容をどう生かすかは、各大学や設置者の自由な判断に委ねられる。協会が関わるのは、課題についての情報を集め関係者が討議し、解決策を提示するところまで」というスタンスだ。
 04年度は「入試専門委員会」「地域貢献専門委員会」など八つの委員会が設置されている。「法人化特別委員会」に加え「法制・目標・評価専門委員会」などでも、公立大学の法人化に伴う様々な問題を扱う。公立大学法人は国立大学法人と比べ緩やかな制度設計となっており、各設置者の判断で決められる部分が多い。そこで、多くの大学に共通する課題を解決するためにはどんな法人にしたらいいかという観点から、定款のモデルなどを示した。
 法人化した場合、人事制度も大きく変わるため、「人事制度特別委員会」では、公立大学から要望が多い就業規則の考え方とモデルづくり、募集・採用に関する事項、教員の雇用形態などの検討を進めている。このうち教員の雇用形態については、定年制や任期制、再任・任用基準、兼業・兼職規制の緩和、他大学との人事交流(出向)、教員のインターンシップ、非常勤教員の雇用管理といった課題について検討中だ。また、外部から招へいする場合のルールづくりについても研究が必要としている。

プロ職員の養成を目指し、協会がセミナーを実施

 職員の能力開発も大きな課題だ。公立大学では、自治体の職員が2〜3年という期間限定で異動して運営に携わることが多いため、大学運営のノウハウが蓄積されず、プロ職員も育たないという問題が関係者から指摘されている。
 小規模校が多い公立大学が個別に職員の育成に取り組むのは効率が悪く、ノウハウもない。そこで、今や“共有財産”的な存在になった公立大学協会に教職員の能力開発の企画と実施を求める声が強くなっている。公大協では、今年度から「教職員の能力開発のあり方検討委員会」を立ち上げ、この問題に取り組んでいる。
 「多くの大学から要望を受けているので、秋には具体的な能力開発の方向を出したい」考えだ。委員会では、
(1)学長、事務局長などトップマネジメントクラス
(2)学部長、センター長など教学管理職
(3)事務職員、の三つのクラスに分け、それぞれに必要な内容を提供。事務職員については、企画・総務・人事系、財務・会計系など、領域別の各種セミナーも行うことになりそうだ。



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