■職員養成の課題
行政の人事制度に縛られ、専門家が育たない構造に
このように、大学が地域貢献を果たしていくためには、予算や施設管理と教員の補佐業務といった従来型の事務局機能から脱皮し、大学のミッションを踏まえ、大学の外との有機的連携を構築し、協働を推進していくためのより専門的で高度な能力と熱意を持つ大学事務職員が求められる。アメリカにおける「アカデミックアドミニストレーター」のような職能の確立が必要である。
しかし、このような専門的大学経営人(アドミニストレーター)の確保という点で、公立大学は大きな問題をかかえている。国立大学法人の事務職員はこれまで大学間または大学と文部科学省との間を異動し、私立大学事務職員は原則として定年まで同じ大学に勤務する。これらに比べて、公立大学の事務職員の場合は、自治体の中の様々な部署からたまたま大学事務局に転入してきて、2、3年たつと自治体の他の部署に転出するというのが一般的である。
そのため大学経営の専門家が育たないシステムとなっており、「素人による大学運営」というのが多くの公立大学の実態である。自治体の様々な部署でいろいろな種類の仕事を経験し、幅広い視点を持つ人材が大学運営にあたることには、メリットもあることは事実である。
しかし、やっと大学経営の仕事に慣れたらすぐ異動で大学からいなくなり、後任者はまたゼロから大学経営を学び直す、という非効率は改善されるべきだ。このような事務局体制では、厳しさを増す大学間競争に勝ち抜くことはおぼつかないからである。
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