ベネッセ教育総合研究所
特集 高等教育分野への新規参入者たち
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■アドミニストレーター制度
地域住民と協働する力や教学の企画能力も必要に


 それでは、公立大学におけるアドミニストレーターの機能とはどのようなものか。それは一言で言えば、学長による大学のガバナンスが戦略的、効果的に遂行されるように専門的な立場から学長をアシストする機能である。公立大学アドミニストレーターの特徴は、公立大学のミッションとしての地域貢献を大学経営の第一義的課題として位置づけ、それにもとづいた戦略的な大学経営を補佐することである。これは、地域における文化・学術センターとしての大学の立場から、設置自治体、市民、地元経済界、NPOなど様々な地域のセクターとの連携・協働を推進する機能とも言える。
 このような公立大学アドミニストレーターは、大学事務職員や自治体職員などを対象とした専門職大学院教育などを通じて養成し、一定のポストについては教授職としての処遇も検討されるべきであろう。教授職とすることで、カリキュラム編成やアドミッションポリシーの策定など、従来は教学固有の領域と考えられてきた分野の一部を、より専門的、効率的に企画運営できるようになる。つまり、大学アドミニストレーションの確立は単に事務局機能の強化にとどまらず、従来教学の領域とされてきた分野の業務についても、より高度で専門的な立場から再編・強化することを意味し、それを担うためのアドミニストレーター制度の導入が必要である。そうなれば、多くの教員も「雑事」から解放され、教育研究により専念できるであろう。
 大学アドミニストレーターは、第一義的には大学全般に共通する職能として考えられるべきである。国公立大学の法人化は、国公私という設置形態の区別を次第に無意味化していくと考えられるから、大学アドミニストレーターに求められる能力は、基本的に設置形態を超えた共通のものとなる。
 従って、自身の専門的能力を武器に、大学アドミニストレーターが設置形態を超えて大学間を異動することが可能となるような制度創設が求められる。そのような制度の実現のためには、大学アドミニストレーターの人材育成機能の確保と、彼らに対する評価システムの確立が急務であり、国公私立大学総体でこの課題に取り組む必要があるといえよう。
法人化後も自治体との連携・人事交流が必要

 また、公立大学が仮に法人化された場合でも、設置自治体との間での人事交流は何らかの形で続けることが望ましい。公立大学は、設置自治体との連携が極めて重要であり、それを担保するには、弊害をもたらさないよう十分工夫しながら常に人的交流を保つことが必要だからである。また、常に大学の外から大学経営を点検するためにも、人事交流は有意義である。
 さらに、今後公立大学の経営においては、市民との協働の視点が求められる。地域に貢献するということは、市民参画の観点から市民と大学の関係を問い直すことにつながる。生涯学習や産学連携といった取り組みを通じて、大学を市民に開かれた存在とし、両者の協働関係を構築・強化することを目指すべきであろう。このようなプロセスを経ることで、地域と共生し市民に支えられる大学へと脱皮していくだろう。
 財源確保についても環境は変化する。これまでのように自治体からの安定的な財政支援はあてにできなくなるため、ファンドレイジングによる運営資金の多様化を図らなくてはならない。そのためにも、大学としてのミッションを明らかにし、透明性の高い大学経営を行うことが求められるだろう。また、この点については、税制の改正により、多様な資金源の確保を可能とする制度改革が求められる。


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