ベネッセ教育総合研究所
特集 今、なぜキャリア教育か
 
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起業教育や就職支援に力を入れる

 アメリカの大学ではインターンシップが盛んで、学生にとっても重要な就職活動となっている。期間も日本では2週間程度だが、アメリカでは半年から1年間かける。企業側もインターンシップを通して優秀な学生を探し、社員として採用するケースが多い。CCEでは「起業・インターンシップ部門」が、インターンシップと起業に関するサポートを行っている。コロンビア大学ではインターンシップを就職へのステップと捉えるだけでなく、社会ですぐにプロフェッショナルとして活動ができるよう、在学中に職業体験を積ませることを目標としている。学生の多くが2年生の夏からインターンシップを始めるが、「企業側は、すでに体験したことのある高学年の学生を求める傾向がある。受け入れ先の確保については、学生間での激しい競争が恒常化している」(プラッツ氏)。
 CCEには、長年培った企業や行政団体とのネットワークがあり、学生たちに広い選択肢を提供できるのが強みだ。従来のつながりを生かしつつも、常に職員が企業を訪問し、学部生、院生、卒業生のインターンシップ先を確保するための努力を続けている。また、専門職団体や大学卒業生協会に対しても、電子メールや文書で協力を要請しているという。
 CCEは学生の起業も積極的に支援している。ワークショップなどを通じて、営利ビジネスや非営利団体の運営ノウハウを提供。起業教育をリーダーシップ育成の柱の一つとして位置付けている。毎年全学生を対象に「ビジネスプランコンペ」を開催し、優勝者にはプラン実現のための資金を提供する。ビジネス化にこぎ着けた学生は、経費を差し引いた収益をCCEにキックバックし、それが次の新規ビジネスの資金に充当される仕組みだ。
 「求人部門」には、企業や団体の雇用担当者が人材を求めて訪れる。就職希望の学生も情報収集のためやって来るが、多くはCCEのウェブサイトに登録し、企業説明会の情報入手や求人内容の確認、応募までをパソコン上で進めている。
 応募から就職までの一般的なプロセスは次の通り。まず企業の雇用担当者がCCEを訪れ、書類で選考した応募者と約30分の面接をする。その中から選抜された数人が企業に招かれ二次面接を受ける。三次、四次と面接を重ねる場合もあり、最後まで残った学生が入社することができる。プロセスごとに、必要に応じてキャリア・アドバイザーがサポートする。
 「学内就業部門」は、大学内での就労サポートを担当。例えばCCEでは、各部門のカウンセラーやコーディネーターの下で助手を務める院生の実習生がいるが、彼らもこの学内就業部門が配置をコーディネートしている。院生助手の時給は現在12ドルだという。
 全体を効率よく運営するため、プラッツ氏の下、各部門のディレクターを集めたシニアミーティングを週1回、全スタッフのミーティングを隔週単位で開催し、お互いの連携を図っている。

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コロンビア大学
ゴールを見極めるためのサポートに徹する

 CCEでは、第1ステップで綿密な自己分析をさせることによって自分が何者であるのかを認識させ、第2ステップでキャリアプランを立てさせるという方法をとっている。また、就職活動は目標に向かって進むための一つの方法と捉え、別の方法論として起業計画を重視している。「事業主は仕事を探さない。自分と周囲のために仕事をつくり出す」と定義し、学生がよりグローバルな視野が持てるよう導いている。
 プラッツ氏は、「学生が第一にしなければいけないことは、自分の人生とキャリアについて分析すること。自分が持つ情熱を知り、学び、密着して、その情熱とともに生きることが大切。CCEとしては、それらのプロセスを助けるとともに、経済状況に左右されず、学生が自分のゴールをはっきりと見極めることができるよう導いていきたい。そのためにも、企業や団体の雇用主との関係を密に保つことが重要と考えている」と語った。


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