ベネッセ教育総合研究所
学生像を知り尽くした手配りで学習支援を強化
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全カリの実績に基づく外国語と専門科目の融合

 立教大学における全学共通カリキュラム(全カリ)の構想は1969年度までさかのぼるそうだが、本格的な実施は97年度からだ。以来、全カリ運営センターが教員人事権、予算編成権を持って機動力を発揮してきた。全カリの言語教育科目についても、学生像を見極めつつ開発した独自の外国語教材、教育をメーンに担当してもらう嘱託講師制度、学生のニーズに合わせた目的別の科目設定など柔軟な教育に徹してきた。その結果、03年度の調査ではTOEICスコアが入学直後の平均475点から4カ月後には平均569点に伸びるなどの成果を上げている。こうした例は、教育成果を示す上でどのような言葉よりも説得力がある。
 この全カリにおける異文化コミュニケーション能力の開発実績の延長線上に、06年度に新設を予定する経営学部のカリキュラムがある。
 卒業後には、学んだ知識を生かして海外の研究者や職業人と高度なコミュニケーションができる能力を身に付けてほしい、そのために英語で専門科目の授業を実施したい、ということはどの大学教員でも考える。理想形といってもよい。しかし、ほとんどの大学はそのための基礎となるカリキュラムを持っていない。そのため絵に描いた餅になりがちだ。
 最近、いくつかの大学で英語コミュニケーション能力に秀でた学生が増えつつあると聞くが、彼らは帰国子女、留学体験者、あるいはダブルスクールで英語の習得に励んだ学生であって、大学の語学教育だけの成果とはいえないことが多い。
 立教大学の目指す「仕事で英語が使えるバイリンガル・ビジネスパーソン育成」のための4年間一貫の教育プログラムは、高校卒業までに外国体験がない“普通の学生”を対象にするという。
 この教育プログラムが成功すれば、画期的なノウハウとなり、企業や他大学から注目されることだろう。もちろん立教大学に集う学生に、もともと優秀な人が多いという点を割り引いても。
 十分な実現の見込みがあるにもかかわらず、05年度は、既設の経済学部と社会学部で国際経営分野を学ぶ1年生を対象に、カリキュラムを試行するという周到さである。逆に見れば、学部の新設とはいっても、立教大学にとっては全カリの実績に基づく、継続性のある射程内の改変であることの証といえよう。


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