ベネッセ教育総合研究所
特集 教育の質をどう保証するか
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政策は、計画策定と規制からビジョン提示による誘導へ

 答申は全5章で構成されている。
 新しい時代における社会と高等教育の関係を概観する第1章では、21世紀を「知識基盤社会」と位置付けた。個人の人格形成の上でも、社会を発展させ国際競争力を高める上でも、高等教育が重要な役割を担うと指摘。人材が最大の資源である日本にとって「高等教育の危機は社会の危機でもある」という強い文言が盛り込まれた。
 第2章では、05年から15年頃までの中長期的視点で想定される高等教育の将来像のうち、主に全体像に関する事項を示した。04年度に141万人の18歳人口が、09年度以降120万人前後で推移するとの予測を提示。従来の試算より2年早い07年に大学全入になるとした上で、高等教育政策が18歳人口の増減に基づく「計画の策定と各種規制」の時代から、「将来像の提示と政策誘導」の時代に移ると指摘している。国の役割として、学習者への情報提供や財政支援とともに挙げられたのが、「質の保証システムの整備」だ。
 答申ではさらに、高等教育の量的需要はほぼ充足され、今後は「誰もがいつでも自らの選択により学ぶことのできる『ユニバーサル・アクセス』の実現が重要な課題」と述べている。学習者の多様なニーズに対応するため、高等教育機関は個性・特色を明確にしていくべきだと提起。大学の機能として(1)世界的研究・教育拠点(2)高度専門職業人養成(3)幅広い職業人養成(4)総合的教養教育(5)特定の専門的分野(芸術、体育等)の教育・研究(6)地域の生涯学習機会の拠点(7)社会貢献―の七つを初めて提示した。これらの中から、各大学が主体的に選択していくつかを併せ持つことで、「保有する機能や比重の置き方は異なる」という方向性が示されている。
 このように大学の新たな使命と明確な個性の必要性を打ち出す文脈の中に位置付けられた「高等教育の質の保証」の詳しい中身については、後述する。
 18歳人口の減少によって、定員を充足できず経営難に陥る大学が増えると予想される。そこで、「経営改善を支援するため、関係機関の連携のもと、経営分析や指導・助言を通じて、各機関の自主的な改善努力を促す」必要性にも言及。存続が不可能になった大学については、在学生の修学機会の確保を最優先に対応策を講ずるべきとし、そのための関係機関の協力体制づくりを求めている。


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