ベネッセ教育総合研究所
特別企画  レポート 05年度私立大学 志願状況分析
 
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地方で目立つ地元大学志向

 地区別の志願状況は(図表1)の通り。

図表
 北海道地区の志願者指数が最も低く10.7%も減っている。大規模大学の多い東京地区、近畿地区でも減少が続いている。一方、東北、東海・北陸地区では志願者が増加しており、中国・四国、九州地区は減少率が小さい。北海道以外の地方部では、地元大学志向が強まり、大都市部に志願者が流出しなくなってきたことを示している。志願者が増加した主な大学を例に取り上げながら、地区ごとの動きをもう少し詳しく見てみよう。

  北海道地区では、従来、国公立大学を目指す者が多く、地元私立大学は敬遠されている。その中で、近年は札幌市内および郊外の私立大学に志願者が集中する傾向が続いている。

  東北地区は、前年度は志願者が減ったが、05年度入試では増加に転じた。これは東北学院大学がセンター試験利用方式を新たに導入し、1700人近く増加したことが大きな要因である。そのほか、いわき明星大学は理工学部を科学技術学部に改組し、志願者が増加。1次試験・2次試験とも1月に試験を実施している岩手医科大学も志願者増となった。

  関東・甲信越地区は東京以外の首都圏を含んでおり、4.1もの減少となった。比較的都心に出やすいこともあり、東京の大学に流出した志願者が多かったためと思われる。とりわけ2月末以降に行う後期入試(名称は「3月試験」「2次試験」など、大学によって違う)での志願者流出が顕著だったようだ。この地区で目立つのは、中小規模大学で志願者を増やしていること。上武大学、城西大学、東京国際大学、淑徳大学、和洋女子大学、東洋英和女学院大学、フェリス女学院大学などが例に挙げられる。長野県や新潟県にも増加した大学がいくつかあった。

  東京地区は3.7%の減少と、前年度に続けて減った。これは、センター試験利用方式の志願者が、04年度までに導入していた大学で大きく減っているためで、その中には導入2年目の大学も含まれている。逆に、新たに導入した大学では、その分だけ志願者が増えている。青山学院大学では3500人近く増えたほか、明治大学情報コミュニケーション学部・政治経済学部、立教大学法学部、早稲田大学国際教養学部、法政大学文学部の哲学・英文・史学の各学科も、センター試験利用方式の導入によって志願者増となった。
 帝京大学は医療技術学部に看護学科と診療放射線学科を新設。帝京大学は、前期日程の試験日が2月1、2、3日という東京では早い日程で、しかも3日間の試験日自由選択制であることなどが受験生から受け入れられ、4600人近く志願者が増加した。
 明星大学も5000人近く増え、総数では約2倍となった。造形芸術学部を新設し、入試制度も抜本的に改めた。試験は1月末に前倒しした上、全学部同じ日にそろえた。中期・後期試験も設定し、複数回の受験チャンスを用意。センター試験利用方式も加え、併願者の受験料を減額したことも、受験生に受け入れられたようだ。亜細亜大学は前年度の志願者減の揺り戻しもあり、1800人近く増加した。  東洋大学の文系5学部では、05年度から都内の白山キャンパスで4年間学べるようになり、志願者が増加している。朝霞キャンパスに新設されたライフデザイン学部や工学部の新学科にも志願者が集まり、大学全体で約4000人の増となった。

  東海・北陸地区は、04年度は減少したが、05年度入試では増加に転じた。例年は近畿や東京への流出が目立つ地区だが、東海地区では愛知万博や新空港開設など、地域の活性化につながる話題が多く、この点も地元に受験生を引き留める結果につながったのかもしれない。中京大学は商学部を改組して総合政策学部を新設した上、センタープラス方式を全学部で導入し、志願者増となった。名古屋学芸大学はヒューマンケア学部を新設し、センター試験利用方式を各学部とも前後期に分けるなどの改革で、志願者を2倍以上に増やした。金城学院大学や愛知学院大学は、薬学部新設で大幅に志願者数を伸ばした。日本福祉大学も入試方式を変更して増加。このほか、常葉学園大学、静岡理工科大学、聖隷クリストファー大学、浜松大学なども志願者増となった。

  北陸地区でも地元私立大学への出願が目立った。金沢工業大学は、1月末に試験日を前倒しし、3日間の試験日自由選択制を導入したことで、1000人以上増加した。金沢医科大学、福井工業大学、仁愛大学も志願者増となった。

  近畿地区では、多くの大学が後期入試を実施している。05年度入試では、その後期入試での志願者減は2.4%と小幅だった。志願者が7500人以上も増えたのは同志社大学。文化情報学部の新設に加え、文学部を改組して社会学部を立ち上げた。工学部を除く全学部で同一日程の入試を新たに設定し、従来の学部別入試と併願できるようにするなどの改定を行ったことが功を奏した。
 女子大から共学になった京都橘大学も、看護学部を新設したことで志願者数は04年度の3倍を超えた。同志社女子大学は薬学部を新設し、04年度を上回る志願者数となった。
 関西大学は、社会学部でセンター試験利用方式を新たに導入したほか、各学部のセンター試験利用方式の出願締切日をセンター試験受験前に設定する前期型と、センター試験と独自試験を組み合わせた中期型、さらに締切日の遅い後期型に分け、受験チャンスを増やした。その結果、センター試験利用方式は大幅な志願者増となった。
 関西学院大学は、社会学部および総合政策学部でセンター試験利用方式の出願締め切りを同試験受験前に変更、安全志向の受験生を集め、全体的に志願者増となった。

  中国・四国地区は、近畿に加え東京に流出する受験生も多い。しかし、05年度入試では地元の私立大学への志願者が多く、減少率は2.3%とわずかであった。医療福祉マネジメント学部を新設した川崎医療福祉大学では志願者増となった。

  九州地区も減少率は2.2%と小さい。この地区は、従来、国公立大学志向が強く、他の地区の国公立大学に出願する受験生も多いが、私立については地元の大学に出願する傾向が強くなっている。中村学園大学がセンター試験利用方式を導入して志願者を増やしたことも、減少に歯止めがかかる要因となった。宮崎国際大学はA日程の試験日を1月30日、B日程を2月6日に繰り上げたことが志願者増につながった。


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