VIEW21 2002.2  IT Introduction 情報技術が学校をどう変えるのか

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 '01年6月、中学校高校の専任教師76名全員に最高スペックのノートパソコンが購入されたのを機に、大竹先生は普通教室の授業でのIT活用を積極的に推進していった。教師がパワーポイントで制作したものやWebなどを利用した教材を積極的に取り入れることで、授業の活性化を図ることが目的だった。
 しかし、パソコンに苦手意識がある教師はなかなか興味を示さない。そこで「授業での成功例をつくろう。ITが授業に役立つことを全ての教師が実感しないとだめだ」と考えた大竹先生は、まずITと相性の良い英語での導入を、全体の起爆剤とすることに決めた。英語担当の松崎秀彰先生はIT導入を受け入れた理由を、次のように語る。
 「ITは音声・画像・テキストと、英語学習に必要な3要素を同時に生徒に提供できます。また、インターネットは世界中の学生と英語で交流したり、海外の最新情報を得たりと、世界とつながる窓として活用できる。英語の授業にも十分役立つと思いました」
 まず、8月に英語教育用コンピュータ室(マルチメディアルーム 通称MR)を設置。生徒用48台と、教師用3台のパソコンを導入し、LANで接続した。さらに3台のプロジェクタと3面のスクリーンを取り付け、教師用のパソコン画面をスクリーンに映し出せるようにした。普通教室でも固定プロジェクタと教師用に1台のパソコン、グループ学習用としてノートパソコンを数台常置した。英語科ではこれらの設備を使い、生徒にとって分かりやすく興味・関心を引き出す授業にするにはどうすればよいのか検討を重ねていった。中でも英語学習に必要な機器が揃っているMRの活用方法については、様々な議論がなされた。ここでは、MRでの授業を中心に、同校の取り組みを見ていく。

ITを活用した授業で見えてきた生徒一人ひとりの表情

 松崎先生は週に1度、1年生を対象にMRで英語の授業を行っている。生徒は、教室に入ると同時に自分の席のノートパソコンをインターネットに接続し、松崎先生のホームページにアクセスする。そこでは、松崎先生が事前に用意しておいた、その日の授業の教材が見られるようになっている。教室前方のスクリーンにも教師の作成した教材が映し出されるので、生徒は自分のパソコンでどの画面を開けばよいかすぐに分かるようになっている。
 授業で社会問題などを取り扱う場合は、授業の初めに、その問題の概要を説明するための動画を見せる。例えば、アメリカの黒人差別廃止運動の指導者であったキング牧師について取り上げる場合、キング牧師や人種隔離政策に関する映像を、英語のナレーション付きで流す。その後、生徒は2人1組になり、インターネット上のテキストを使い映像の内容を確認する。テキストには映像の内容を問う問題とキング牧師に関する長文が用意されている。隣の生徒と互いに質問し合い、会話を進めながら内容についての理解を深めていく。松崎先生は、生徒たちが各々のペースで会話を進めるのを見守る一方、会話がうまく進んでいない生徒を見つけると、そばに行ってアドバイスを行う。また、授業ではインターネット上の海外ニュースにあった動画を見せ、音声を聞かせることもある。


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茗溪学園中学校高校教諭
大竹隆夫
Otake Takao
教職歴34年目。同校に赴任して34年目。化学担当。「電子や分子のミクロの世界を生徒に伝えたいですね」
茗溪学園中学校高校教諭
大久保雅彦
Okubo Masahiko
教職歴9年目。同校に赴任して9年目。英語担当。「生徒全員がITを活用できるようになるといいですね」
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茗溪学園中学校高校教諭
佐藤賢士
Sato Kenji
企業に7年間勤務。教職歴8年目。同校に赴任して8年目。英語担当。「企業勤務で得た経験を授業に活かしたい」
茗溪学園中学校高校教諭
松崎秀彰
Matsuzaki Hideaki
教職歴6年目。同校に赴任して6年目。英語担当。「授業や課外活動などに生徒と一緒に楽しんで取り組んでいきたい」

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