VIEW21 2002.10  国際人を育てる THINK GLOBAL

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日本のことを何も知らない自分

飯野 皆さんは、小さいときから海外に行って異文化と触れ合うチャンスに恵まれていますよね。では、実際に海外生活を体験してみてどんなことを感じましたか?
福富 どんどん自分から話をしないと、そこに存在していないのと同じなんです。皆、もっと気遣ってくれると思っていたんですが、黙っていても誰も話しかけてくれない。現地の生徒たちにしてみれば、英語が話せない、つまり日常会話ができない生徒なんて相手にしないんですよね。
朝田 そうそう。新入生だからって自己紹介なんてないんです。だから、私は授業終了後、先生に「私は日本から来た留学生です」って自己紹介をしに行ったり、電子辞書を持っていって、クラスメイトに漢字を教えて、友達づくりのきっかけにしました。みんなの注目を集めるように、いろいろ工夫しましたね。
福富 私は、言いたいことが言えるようにいろいろなフレーズをメモしておいて、話すチャンスをうかがってました。みんなすごいスピードで喋るから、いちいち考えて喋っていたら会話にならないんです。とにかく覚えて、チャンスと見ればパッと喋れるようにしようとするうちに、語彙も増えていったように思います。
飯野 何よりも「伝えたい」「コミュニケーションをしたい」という気持ちが大切だってことだよね。
山田 そう思います。僕も最初は全く話せなかったんだけど、ホストファミリーや学校の友達に、下手でもいいから、何か話そうと努力しているうちに、話せるようになっていました。
飯野 他に、留学して気になったことや変わったことは何ですか?
福富 日本について改めて考えましたね。留学するまでは、欧米の国に憧れていて、日本人であることに誇りなんて持っていませんでした。だから、日本の文化や歴史など何も知らなくて、聞かれてもうまく答えられなくて…。私は日本人なのに何で日本のことを何も知らないんだろう。もっと自分の国のことを勉強しなきゃって思いました。
山田 僕も、日本の天皇の名前や制度のことを聞かれて答えられなかったな。
山本 外国の人は日本のことって意外とみんな知らないんだよね。日本のゲームや機械についてはよく知っているのに、まだサムライや忍者が街を歩いていると思っている(笑)。
朝田 アメリカの人が、ソニーはアメリカの企業だと思っていてびっくりした。大企業はみんなアメリカのものだと思っているんだよね。日本のことをもっと知ってほしい! と思いました。
飯野 みんな海外に出ることで、自分のアイデンティティを再確認したり、自分の国のことを考え直したりしたんだね。

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終始、和やかな雰囲気で進んだ座談会。4人の高校生にとって、留学の経験は、自分の視野を広げるだけでなく、国際社会で起こっている様々な課題を自分なりに考えるよい機会ともなったようだ。



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