ベネッセ教育総合研究所
特集 進路学習の深化を探る
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これから主要になる進路学習の方向性
---お話をうかがっていますと、高校における進路学習の方向性を改めて確認する必要があるように感じました。先生方はどのようにお考えですか。
鈴木 どちらかというと今までの進路学習では、職業→学問→大学と、人生の方向性を収斂(しゅうれん)させる方向でプランが精緻化されてきたと思います。しかし、ちょっと考えてみても、今後数十年の人生を高校段階で設計するというのは相当ハードルの高い作業です。むしろ、高校の進路学習のゴールは、今後数十年というスパンの中で積み上げる「キャリア」に対する基本姿勢を確立できればそれで十分なのではないかと思います。流動的な今後の社会の中では、融通の利かない人生設計を固めてしまうよりも、人生設計の基礎となるしっかりした自己を確立することこそ、重要なのではないかと思います。
久保田 同感ですね。「人生を決める」というより、「人生について考えるための方法を身に付ける」ことを重視した指導こそ、高校の進路学習の本質ではないかと思います。例えば、学問研究をするにしても、それを直接的に大学進学につなげてしまうようなやり方ではなく、興味を持てる学問の楽しさそのものから、進路の一つの可能性を考えるといったアプローチを再考すべきではないでしょうか。
井上 ある意味、「生き方の基礎」を確立することが、進路学習の目標だと思うのですが、そうした観点に立ったとき、今一度見直さなければならないのは、生徒一人ひとりに有意義な高校生活を送ってもらうことだと思います。本校でも、卒業後に自己実現を果たし、生き生きと過ごしている生徒の多くは、応援団や部活動などに「志」を持って高校時代を過ごした者です。そうした生徒は将来の展望以前に、自分の「生き方」がしっかりしていたわけですよね。社会に出た後でキャリアを積み重ねることができる生徒というのは、結局そういう生徒でしょうし、そのためにも高校時代に成功体験を持たせることが重要だと思います。人づくりという大きな視点で進路学習を見直すことが必要だと思いますね。
井上哲秀
「生きざま」に触れさせることが求められていると思う
塩野谷 卒業生と話をすると、校是である「滝の原精神」という言葉を口にする人が思った以上に多いんです。高校で身に付ける進路観の本質とは、細かな知識やキャリア設計よりも、おそらくそういうものじゃないかと思います。自分の生き方のベースとなる価値観を身に付けること。そのための手立てを整えていくこと。これからの進路学習には、益々それが大事になるのではないでしょうか。
---本日はありがとうございました。


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