ベネッセ教育総合研究所
大学改革の行方 大学競争時代の幕開け〜グッド・プラクティス
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学びへの動機づけを模索する大学の姿が浮き彫りに
 採択された取り組みの傾向を見ると、大学教育改革の現在の姿がおぼろげながら見えてくる。大学基準協会の工藤氏によると、過去2年間の選定内容で目に付くのは「学生の自学自習力の養成」だという。
 「大学全入時代を目前に控え、大学の大衆化は今後益々進展していきます。多様な学生が入学してくれば、必ずしもすべての学生が高い学習意欲を持って学習に臨むとは限りませんから、いかに学生に学びへの動機づけを与えられるかが大学にとって重要になっているのでしょう。過去2年の審査結果からは、こういった現実に向かい合う大学の姿勢への評価が表れているのだと思います」
 また、地道な教育活動を展開して成果を上げている大学も見られたという。
 「特色GPのような取り組みでは、つい先進性や特殊性に目を奪われがちですが、教育とは本来、地道に努力を積み重ねていく中で成果を上げていくものです。ですから、基礎教育に重点を置いた大阪大のように(※2)、特に目新しさは感じられないものの、着実な努力に基づいて成果が積み上げられているものも積極的に選定しました。こうした事例を通して多くの大学が、本来行うべき教育にも目を向けることを願っています」(大学基準協会・工藤氏)
※2 大阪大は「進化する理学教育プログラム」のテーマで、04年度の特色GPに選定された。理学部の全学生に数学・物理・化学・生物のすべての基礎的素養を持たせるため、前記科目の講義・実験の必修化や学科単位の少人数ゼミの実施、250科目から自由に選択できるカフェテリア方式の採用などの教育システムを敷いている。
 では、こうした大学側の努力を高校はどのように受け止め、進路指導に役立てればよいのだろうか。
 「本事業はあくまで大学の取り組みの一部分を評価しているにすぎませんから、特色GPに選定されたことをもって大学全体の評価と考えるのは危険です。ただ向こう数年間、事業を続けて選定件数が積み上がってくれば、ある程度大学の特色や教育力が見えてくると思います。例えば工学院大のように、2年連続で異なるテーマ領域で選定されている私立の単科大もあります。また、こうした事業は申請すること自体に意味があるとも言えます。それだけ一生懸命改革を推し進めている大学だと評価できますし、選定から漏れた大学であっても、組織を横断して議論をする過程で大学の意識改革や活性化につながっていますからね」(文部科学省・山崎氏)
 学部・学科教育に対する評価だけに、大学改革の中でも高校の教育と密接に関わる事業だが、高校現場における特色GPの浸透度は今一つのようだ。そのため、文部科学省では03年度、特色GPに選定された全ての大学の取り組み概要を掲載した事例集を、各都道府県教委を通じて希望する高校に配付した。更に04年度は全高校に配付する予定だ。また、大学基準協会では04年度中にフォーラムを全国4会場で開催し、高校の進路指導の教師にも直接アピールしたいという。
 今後、高校は特色GPを含め、社会に公表されるこうした第三者評価について、その背景と実質を正しくつかんでいく必要があるだろう。次ページからは、特色GPに選定された大学の具体的な取り組みを紹介したい。


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