ベネッセ教育総合研究所
特集 学校組織の機能活性化
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学年全体の目標を自分の言葉に置き換える
 明確な目標設定の次に必要となるのは、それを実行する組織の成員が、目標を「自分のもの」として認識することである。学校組織に照らせば、日々生徒と向き合って指導に当たる学年団の教師たちが、いかに目標を具現化できるかが問題となろう。特に、3年間の中長期的な目標を進路指導部が策定する尾道北高校においては、このハードルをクリアしないことには、せっかくの目標が「お仕着せ」のものと映ってしまう。
 そこで尾道北高校では、「進路指導マニュアル」の内容を年一回の進路研修会で全校に通知した後は、その内容を再度、学年に直接下ろすことを避けている。その代わり、各学年に進路指導部と共通に籍を置く教師を必ず二人以上置き、その教師が橋渡し役となって、「進路指導マニュアル」の内容を学年に伝える体制となっているのだ。また、その際には、「進路指導マニュアル」を教師用と生徒用の2種類の「進路シラバス」に一旦書き換え、その上で学年会で共有しているのだ(図2)
図2
 「いくら精緻な『進路指導マニュアル』があるからといって、それをそのまま学年に持ち込んでは、『押し付けの目標』という印象は拭えないと思います。そこで、学年の進路担当者がその内容を理解した上で、一旦自分の言葉に置き換える作業を取り入れました。効率は良くないかも知れませんが、設定された目標を『自分の学年の課題』として認識するためには、教師が自ら手を動かす作業が不可欠だと考えました」(松井先生)
 そのため、学年版「進路シラバス」の書式自体にも工夫が凝らされている。すなわち、「進路指導マニュアル」が年間計画を示すのに対し、それを咀嚼(そしゃく)した「進路シラバス」は、1か月に期限を区切って、短期的な指導目標を具体的に示す形式になっているのだ。
 「リアルタイムで変化する生徒たちに向き合う学年団の教師にとって、1年間というタイムスパンは日常の指導においてはあまり現実味がありません。そこで、指導の実情に応じて月ごとに指導目標を示すと共に、指導内容を精緻化しました。これにより、『進路指導マニュアル』の内容は、よりその時々の学年の実情に応じたものに咀嚼できるわけです。また、この作業は、学年版『進路シラバス』の執筆に当たる担当者にとっても、指導力を磨く格好のトレーニングの場となっています」(船倉先生)


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