ベネッセ教育総合研究所
特集 高大連携の未来形
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3 今後の三つの方向性
 では、今後の高大連携はどのような可能性を有していくのか。現在、各地で行われている活動から、概ね三つの方向性が見えてくる。
■連携範囲の拡大

 第一は、高校、大学、教育委員会など連携ネットワークの「拡大」である。高大連携のパターンとして最も多いのは、高校と大学の個別的な結び付きによる連携である。近年、高校の進路学習として行われる出張講義や大学説明会等でも、1高校と1大学・講座の連携にとどまらず、生徒の希望に応じた複数の大学・講座メニューが用意されることが多い。つまり、1高校が複数の大学・学部にネットワークを拡大しているのである。更には、複数の高校と複数の大学が、高大連携事業の協定の下(県教委)、広域に組織される事例も見られる。例えば、岩手県、茨城県、群馬県、山梨県、京都府、兵庫県、広島県、山口県、長崎県など、高校生を対象とするより広範な取り組みが全国的に増えつつあるようだ。

■連携関係の双方向化

 第二は、高大の連携関係の「双方向化」である。
  従来型の連携では、生徒を高校から大学にいかに円滑に移行させるかという観点から、大学の教育資源の一部を高校の教育活動に活用する「一方通行」の取り組みが多かった。背景には、少子化、大学の大衆化など、大学を取り巻く環境が変化する中、高校生に対する広報活動という大学側の戦略的な側面も挙げられる。
  これに対し、「双方向型の連携」とは、「高校と大学が相互理解を図り、双方の教育の充実・改善に資することを目的とした多面的な連携」である。次章の群馬大と周辺高校との連携はまさにこのタイプの取り組みである。高大の現場教員による教科分科会・共同研究会を開催して、入試問題研究や高大連携の在り方を抜本的に協議、改善していく動きである。

■連携内容の深化

 第三は、連携内容の「深化」である。「深化」とは、高大連携の取り組みが、高校の教育活動に深く関わった形で展開されるという意味である。例えば、次章で見る中央大の「高大接続教育」は、大学の教員が高校の正規の授業を部分的に担当すると共に、授業による生徒の学習成果を大学入試の選抜判定に活用する動きである。これは、高校教育に大学教員が緊密に関与する新しいタイプの取り組みと言える。大学講義を単発的に実施する従来型とは異なり、学習指導面、入試選抜面にまで踏み込んだ連携内容の「深化」と呼べるだろう。その他、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)における高大連携でも、大学教員が高校生の指導に深くコミットする形態が生まれている。



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