ベネッセ教育総合研究所
特集 保護者と「共育」する学校づくり
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全員を対象にした「家庭訪問」の時間を時間割を変更して確保
 PTA総会の終了直後から、宮崎西高校では間髪を入れずに次の取り組みがスタートする。それが、全家庭を対象にした「家庭訪問」の実施である。全国的に高校段階での家庭訪問は珍しいが、進路指導主事の鍋倉一幸先生はその意義を強調する。
  「PTA総会の時点で、担任と保護者は一応『顔見知り』の関係にはなっています。しかし、それだけですぐに信頼関係が築けるわけではありません。そこで、間髪を入れずに家庭訪問を実施し、互いの理解をより深めます。PTA総会で実施する『クラス懇談会』は、ある意味では家庭訪問へ向けた布石なんです」
 家庭訪問について、その細目は現場の状況に即応するために各学年に任されているが、生徒の通学経路や家庭での学習環境を早期に把握することは、その後の保護者との連携に極めて有効に働いている。
  「家庭訪問で意識しているのは、単に学校側のメッセージを伝えるだけでなく、家庭の状況や保護者から得た情報を、きちんと生徒の指導に還元することです。例えば、学校で比較的おとなしい生徒が、家庭では活動的だったりすることはよくありますが、そんな生徒の多くは、新しい環境に馴染めずに、心理的に無理をしているわけです。家庭訪問でこのような細かな状況が把握できれば、生徒一人ひとりにきめ細かなフォローができます。家庭とのキャッチボールを続けることは、生徒を育てる上でも大切なんですね」(鍋倉先生)
  だが、そうした細かな視点で家庭訪問をしている時間的な余裕を、宮崎西高校の教師たちはどのように確保しているのだろうか。特に遠方から通う生徒の家庭を訪問する時間の確保は重要な問題である。
  そこで宮崎西高校は、4月の後半〜5月の中間考査までの約1か月に渡り、通常1コマ50分の授業を45分に短縮して、放課後に家庭訪問の時間を確保している。1日当たり約30分程度は時間が確保できるので、担任は早期に各家庭を回れるわけだ(図1)。
▼図1 家庭訪問の時間を生み出す仕掛け 
図1
  「04年までは中間考査期間のみを『家庭訪問週間』として実施していたため、中にはすべての家庭を訪問するのに夏休みまでかかってしまう担任もいました。これでは早期に家庭との信頼関係を築くことができませんから、思い切って1か月という長い期間を充てることにしたのです」(浜口教頭)
  また、通常より長い放課後の空き時間が生じた生徒に対しては、この時間を利用して「学習方法習得体験」という時間が設定されている。これは、学習習慣の確立を目的とした時間で、各クラスの副担任が自習の監督にあたる。しかもその際は、副担任が生徒との個別面談を積極的に実施し、生徒把握に努めるのだ。
  「担任が家庭訪問をしている期間中は、副担任が積極的に生徒との個別面談を実施し、生徒把握に努めます。担任が得た家庭の情報、そして、副担任が得た生徒の情報を交換することで、早期に正副担任が同じ目線で生徒の指導にあたることができるわけです。導入期の忙しい時期に、着実に生徒や家庭との関係づくりをするためには欠かせない取り組みですよね」(中浦教頭)


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