ベネッセ教育総合研究所
地方自治体がひらく新しい教育
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(3) 9割の子どもが算数が「好き」と回答
 コース分けに際しては、子どもに劣等感を感じさせないため、復習テストの結果と教師との面接を踏まえ、本人に選択させるという形を採った。
  「自分の力を分析することも大切な“学び”の要素と位置づけています。なかには背伸びをしてみたり、友だちと同じコースを選ぼうとしたりする子もいますが、多くの場合、話し合いを通して適切なコースを選ぶようになります」(今井先生)
  コースは単元ごとに編成されるため、単元と単元の接続は、教師にとって大きな課題となる。それを解決するために、理解度や所見欄を設けた綿密な「個人カルテ」(個人記録表)(図2)を作成しているのも錦糸小学校の特徴だ。
▼図2
図2
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 このカルテには関心・意欲、知識・理解、表現・処理、数学的な考えなどの評価と、授業中の様子などについて教師が見取ったことを単元別に記録し、担当の教師が変わっても個々の児童の課題を踏まえた継続的な指導ができるように工夫されている。さらに、カルテを運用しながら担任との情報交換を密にし、より一層個に応じた教育を心がけている。
  こうした錦糸小学校の一連の取り組みの結果、それ以前に比べて、「理解できない子」が大幅に減る効果が表れたという。さらに、それ以上の最大の成果と錦糸小学校の教師が感じていることは、多くの子どもが算数を「好き」と答えるようになったことだ。
  04年度に、1・2年生の計70人を対象に行われたアンケートでは、64人(91%)の児童が、算数を「好き」と回答した。その理由として最も多かったのは「楽しい」であり、さらに「勉強になる」「計算が好き」「わかりやすい」などの理由が続いた。
  錦糸小学校では、保護者への説明にも力を入れている。例えば、保護者向けの研究発表会では、教師によるパネルディスカッションを通して、おもに少人数授業の特色や、長所および短所、子どもたちの姿などを説明した。事後アンケートでは多くの保護者から、学校の取り組みに賛同する回答が寄せられたという。
  錦糸小学校では、今後も引き続き、算数の少人数指導を継続すると同時に、05年度は国語を研究教科とし、その指導にも力を入れる方針だ。その理由を堀口喜男校長はこう説明する。
  「かかわり合い、伝え合い、学び合う資質・能力を向上させるのがねらいです。その取り組みを通じて子どもたちの理解力やコミュニケーション能力を磨き、すべての学びの土台を築いていきたいと考えています」
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▲錦糸小学校の少人数指導。最大の効果は、
「勉強が好き」と答える子どもが増えたことだ


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