ベネッセ教育総合研究所
特集 問われる教育「特色ある大学教育支援プログラム」からの視点
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「採択は当然」と周囲の反応に活動の浸透を実感

 今回の申請に際して、福井大学は教育支援推進検討特別委員会を設置し、02年11月から8回の会議を開いた。各学部や留学生センターから提出されたプロジェクトをどのテーマに申請するかも検討しながら協議。その結果、10年間にわたり組織的に取り組んできた実績や地域への貢献度が高く評価され、この二つのプロジェクトを中心とする新しい教員養成の取り組みの申請が決定した。
 「教育実習」も教員養成の核として申請候補となった。同校の教育実習は事前事後学習も重視しており、1年次から4年次にわたって行われる必修科目で、全国的にも珍しい形態だ。
 「ただし、教育実習自体は他の大学にもあります。ライフパートナー事業や探求ネットワークは教育実習を補完する取り組みですが、他校にはないということで申請が決定しました」(松木助教授)
 ヒアリング審査では、委員からプロジェクトを評価する発言があったため、採択に期待が持てたと教育地域科学部の内田高峰学部長は言う。ただし、難関を突破して選ばれたことに対しての周囲の反応は冷静だ。「両プロジェクトとも地域にかなり浸透しているためか、参加している教育委員会や小・中学校の先生は当然のことと受け止めているようです」と内田学部長は言う。


複数のプロジェクトとの有機的な連携が課題

 今後の課題には、評価方法の確立がある。一つは、電子ポートフォリオを用いた自己評価システムだ。これは、学生が学内LAN上に活動内容や資料を保存するフォルダを持ち、そこに大学や小中学校の教員、学生や大学院生がアクセスし、意見を交換できる仕組み。現在はテキストのみで試行、今回の採択によって得る支援金でバージョンアップする予定だ。
 二つ目は、福井県教育委員会との連絡協議会内に評価委員会を立ち上げることだ。子どもや保護者、学校といった当事者だけでなく、第三者にも学生個々の活動を評価してもらう体制を目指す。
 また、地域と協働した大学院との連結も課題に挙げる。この大学院は、大学教員が小・中学校の「研
究拠点校」に出向いて、その学校が抱える課題について研究・討議をするというもの。小・中学校教員が在職しながら大学院生になり、他の教員も講義に参加できる。「教員が休職して大学院に通うのは大変です。大学教員が出向いたほうが効率はいい。さらに、その学校の問題を同僚と討議できるというメリットがあります」と内田学部長は語る。現在6校ある研究拠点校が増えれば、大学と地域の関係がさらに密になり、教育実習やライフパートナー事業などでの協力を得やすくなる。「複数のプロジェクトを同時進行させることで、何重ものネットワークができ、連携を強めることにつながる」と、松木助教授は利点を強調する。福井大学の教員養成プロジェクトのさらなる進化に注目したい。


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