ベネッセ教育総合研究所
特集 大学広報の今、これから
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ニューヨーク大学の徹底した1to1マーケティング

 ニューヨーク大学(以下NYU)で学生募集について取材をする機会があった。NYUでの学生への接触の流れは以下の通りである。
 学生からの問い合わせがあると、まず2日以内に学長がサインをした手紙(パーソナルレター)、願書、大学案内を送付する。さらに最初の問い合わせから10日以内に、その学生が興味を持っている学部の学部長からの手紙(パーソナルレター)と学部案内を送付する。その後は、定期的にオープンキャンパスの案内などのDMを送付し、継続して接触する。
 一度に多くのことを知らせるのではなく、タイムリーな情報を頻繁に送ることで関心を保つという手法だ。DMは「Dear○○○○」で始まるスタイルで、これによって受け取る側に「あなたに送付している」という印象を強く与えられる。
 保護者への情報提供も徹底して行う。高額な出費が伴う大学進学では、保護者が大きく関与するのは当然という考えからで、「Parent's News」という冊子を定期的に届けることで、受験生と同様に継続して接触する。

効果測定、Webサイトの充実、卒業生へのアプローチが今後のキー

 NYUでは広告を出す場合、媒体ごとにメールアドレスを設け、どの広告を見て問い合わせたのかを集約できる仕組みにしている。また、高校生数人のグループにヒアリング(グループインタビュー)し、広告の評価や検証を行う。そのため、全米35カ所に「Focus Group」という高校生を組織化したグループを持ち、ダイレクトマーケティング全般の検証に活用している。
 NYUに限らず、アメリカの大学の募集広報ツールは、印刷物とWebサイトがメーンだ。NACACでのセッションでも、ツールの活用状況がテーマとなっていた。両者を上手に併用し、訴求対象者の好みや都合に合わせて選ばせることが重要であるという結論だった。印刷物は薄くして、情報満載にはせずにビジュアル重視でイメージを良くする役割とし、もっと詳しく知りたい人はWebサイトに誘導する展開が一般的だ。またWebサイトは、単なる情報提供のためのツールから、コミュニケーションのためのツールとして「バーチャル・キャンパス」「問い合わせ」「資料請求」「チャット」の機能が求められているという。日本の高校生を対象とすると、Webのインフラとしてはパソコンよりも携帯電話が断然進んでいることを念頭に置くことも必要だろう。
 また、アメリカの大学は寄付金が大きな財源であるため、卒業生への接触にも力を入れている。卒業生自身も母校の役に立つことは名誉だと考えて寄付に応じるが、中には経済的な理由で寄付ができない場合もある。そのような卒業生は、居住地域での学生募集活動にボランティアスタッフとして積極的に加わるという。大学は、貢献してくれた卒業生の名前を印刷物に載せるなどして功績をたたえている。
 最近、日本でも卒業生に対して、ホームカミングデーの実施などでのアプローチが重視されるようになったが、今後はさらに活発になると思われる。


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