ベネッセ教育総合研究所
特集 大学広報の今、これから
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メールマガジンで心に届くのは、学生からのネタ(小宮山)

司会 オープンキャンパスも重要な広報手段になっていますが、実施にあたってはどのような点に配慮していくべきでしょうか。
福岡 オープンキャンパスの成否は、いかに学生を巻き込むかということに尽きます。キャンパスを訪れた受験生は、初めて大学と直接的な接触をするわけです。そこで学生が生き生きと運営に関わっている姿を見ると、その大学への親近感もわいてきます。結果として入学者の歩留まり率も高めることができます。
小宮山 オープンキャンパスの学生スタッフが、受験生と メル友になるケースもあります。本学では、スタッフだったメディア学部の学生が、卒業研究の課題としてオープンキャンパス運営のためのeラーニング教材の開発に取り組むなど、教育面へのつながりも出てきています。
伊藤 本学ではオープンキャンパスは年7回開催していますが、企画から運営はすべて学生に任せています。彼女らの一生懸命さが受験生にも伝わるのでしょうか、入学後に自分もやりたいと申し出てくれる人も多いですね。そこでそうした学生をモニターとして組織化しています。モニター学生は現在約400人いて、パンフレットの制作、オープンキャンパスの企画や当日の運営など、様々な業務に携わります。また、モニター学生には事前の研修を行い、企画のプレゼンから事後の反省会までPDCAマネジメントサイクルを徹底させています。
福川 学生たちが自発的に自分の大学の良さをアピールしたいと思い、それができる仕組みや風土を持った大学は強いですね。
小宮山 メールマガジンも学生の協力が不可欠ですね。本学のメールマガジンは、編集を行うのは職員や外部の企画会社です。しかし、そこにネタを持ち込んでくれるのは学生です。そのようなネタのほうが、われわれが考えたものよりも受験生の心に届くようです。
伊藤 本学では、携帯メールマガジンは学生の声だけを載せています。「学生ひとりごと」「授業の空き時間には」など、学生の姿や生活がリアルに伝わるような生の声を集めています。
福岡 学生満足度が高い大学は広報がやりやすいのは間違いないですね。そのような大学では、学生個々に、自分の大学がどれほど素晴らしいか伝えたいという強いモチベーションがありますから、その仕組みを作ってあげればいいのです。
司会 新設学部学科の広報の場合、学生を巻き込む手法は使えませんが、どのような工夫が必要になるのでしょうか。
小宮山 本学は工学部を発展的に改組し、03年度にバイオニクス学部とコンピュータサイエンス学部を新設しました。設置前年の2月には、簡単なリーフレットと主に新設学部に関するアンケートを全国の高校約5000校に送ると同時に、高校生約1万人を対象にした意識調査も実施しました。いずれもマーケティング調査が主な目的でしたが、アンケートに答えてもらうことで新設学部の内容を知ってもらい、それを結果的に広報につなげていこうという狙いもありました。つまり、アンケート自体に広報の効果を持たせたわけです。
福川 新設広報では、アンケートを生かすという方法は有効だと思います。アンケート結果を通して、受験生が新設学部学科に対してどのようなことを期待しているかを読み取ることもできます。その際、結果を一面的にとらえたり、マジョリティのありかを探るだけではだめです。全体の中ではマイノリティであっても、そこに大きな需要や動きの芽があるのではないかと探索することも重要です。


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