ベネッセ教育総合研究所
特集 専門職大学院の本格展開
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技術経営分野
技術と経営の力を備えた人材を


 MOT(Management of Technology=技術経営)も知的財産と同様、文系と理系の融合分野。技術的蓄積をベースに経営について教育する理工系大学と、ビジネススクールの枠組みの中に技術プログラムを設けるところの間で、ターゲットや目指すゴールには違いが出そうだ。03年度開設の芝浦工業大学は前者、早稲田大学は後者といえる。04年度には東京理科大学にもMOTができる。
 技術系企業では、技術的な知識と経営感覚を兼ね備えた人材のニーズが高まっている。優れた技術を消費者ニーズと結びつけて効率よく製品化し、戦略的に市場に送り出すことが、ビジネスにおける重要課題になっているからだ。アメリカでは、MITなどで開発されたMOTプログラムが90年代に一気に広がり、現在では200〜300の大学、大学院で教育しているといわれる。これがアメリカの経済回復の要因とされ、日本でも期待が高まっている。
 企業内でこうした教育に乗り出すケースも出ており、大阪ガスはその先駆け。02年に社内でMOTコースを設け、大手家電メーカーなど他企業からの受講生も受け入れた。この4月には、東京電力と共同で東京・大手町で社会人スクールを設立する。

公共政策分野
地方分権で連携能力が問われる


 04年度には、東北大学、東京大学、徳島文理大学などに公共政策の専門職大学院ができる。背景には、地方分権が進む中での国と自治体の関係・役割の変化がある。自治体の権限と役割が拡大し、職員に求められる能力も変化している。財政がひっ迫する中、地域住民、NPO、企業など民間と連携しその発想とパワーをどう生かすかが大きな課題。職員には、地域資源に関する情報収集力、住民に対する説明と合意形成の能力、異分野の団体が協働するためのコーディネート能力などが必要になる。介護や子育てなど暮らしに密着した住民サービスの提供に成功している自治体では、リーダーシップのある首長や核となる職員の下、住民が主体的に議論し、サービスの担い手にもなっているといわれる。
 こうした変化は、必然的に国や政治の役割も変えつつある。国家公務員には、官僚的発想を脱し自治体や民間を活性化するための発想と力量が求められている。政治活動のかたわら、大学院で政策を学ぶ地方議員も増えているといわれる。さらに、公共政策の新たなパートナーであるNPOや企業に対しても、専門職大学院が担う部分は大きいはずだ。



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