ベネッセ教育総合研究所
特集 専門職大学院の本格展開
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5. 教員に求められるもの
実務家教員の「耐用年数」決める普遍的な研究のスキル


 コーディネータと同様に重要なのが教員の確保で、「実務家」の存在が欠かせない。法科大学院の場合、法曹界に専門実務家が多く経験を積んでいるのでそれほどの問題は発生しないが、一般の専門職大学院では、その専門性の歴史と職業的地位が法科大学院ほど安定していないので、どの程度実務に通じた教員を確保できるかがカギになる。
 さらに、実務家教員の「耐用年数」も考える必要がある。知人の大学関係者は、「経験的に言って、実務を離れて5年が限度」と指摘する。実務の世界の変化は速いため、実務経験だけを武器にすると、それがやがて陳腐化してしまうというのだ。
 ただし実務家であっても、時代の変化に対応できる普遍的な研究のスキルを持っている場合は別だ。その意味で、この知人は「修士号を持っているか、外国、特に職業的な専門性の評価が確立しているアメリカの大学への留学経験がある実務家であれば、教員として一定の専門性を維持できると思う」と話している。問題点の把握と課題設定の確実さ、先行研究の批判的確認、仮説設定、一定の研究方法・スキルの提示、検証と結果分析など研究に関わる総合的なスキルは、教育の質を維持する上で必須であり、これらは特に修士課程で鍛えられるからだろう。
 設置基準で認められてはいるが、第一線で活躍する実務家を専任教員として年間6単位分の教育活動に従事してもらうのは、なかなか難しい。従って、リタイアした実務家を数年の間雇用することも検討する価値があると考えられる。いずれにしても、コーディネータとともにケースを作成し、ディスカッションやグループワークなどを組み合わせることが重要であり、従来のアカデミック型の大学院とは相当に違ったデザインとなることは確かである。


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