ベネッセ教育総合研究所
特集 専門職大学院の本格展開
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4. 専門職大学院のプログラムに求められる要素
プログラム検討が始まった段階の「品質証明型」大学院


 法科大学院や将来専門職大学院の設置の可能性がある医師、歯科医師、教員などの分野では、すでに専門職としての地位が確立され、専門家養成に関して学部教育で一定の実績がある。従ってこれらの専門職大学院は、送り出す専門職業人の数(=資格等の合格率)と「品質」のチェックに重点が置かれるだろう。
 しかし、もう一つの「品質証明」的な専門職大学院は、今後資格付与を検討するにしても、幅広い、あるいは、新しい分野の専門職を養成する課程を企画することになるので、プログラム内容の検討は始まったばかりである。
 2.アカデミックベースだった専門大学院で述べたように、従来型の公共政策や国際ビジネスなどのプログラムでは、現実の必要性に迫られている職種(専門職)をつくるというよりも、「専門家が必要になる可能性がある」という分野について、大学と行政機関、企業それぞれの思いが結びついた観念的・論理的必然性のレベルでプログラムが構想されがちだった可能性がある。仕事上の資格や専門知識に立脚したプログラムから出発した概念ではなかったと考えられる。もっともそのような背景があったとしても、専門職のあり方を考える上では、貴重な経験を積み重ねてきたといえる。

ニーズ、実務家、教員に加え、コーディネータも不可欠な要素

 今後の専門職大学院の展開を考えると、既存の学問体系の学際性や総合性ではなく、実際の社会ニーズに立脚した専門性から出発する必要がある。つまり、一定の社会的ニーズから検討して、その専門性は、短期の集中講座(開催主体は大学でもセミナー産業でも構わない)で満たされるのか、専修学校で身につけるテクニカルなレベルなのか、あるいは、専門職大学院として一定の学問的な成果と社会実態に関する綿密な分析と対応を検討するプログラムにするのかという検討が必要である。
 現場(社会ニーズ)から出発する形で専門職大学院を創る上で必要な構成要素として考えられるのは、
(1)社会的ニーズに基づき、一定の規模をもった専門家の存在の必要性
(2)現場の事情に精通し、どのレベルの専門性が必要かわかる実務経験者の存在
(3)必要な知識やスキルに関して、既存の学問・知識体系をもとにプログラムを企画できるコーディネータの存在
(4)必要な知識やスキルを教授できる教員の存在と、最も効果的な教育方法の開発
などである。つまり、コーディネータの存在が決定的に重要となる。


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