ベネッセ教育総合研究所
特集 専門職大学院の本格展開
PAGE 14/26 前ページ次ページ


アンケート
専門職大学院一覧と解説
〜法科大学院を除く既設・04年度新設の全専門職大学院へのアンケート結果から〜
 編集部では、既設分と2004年度新設分(法科大学院を除く)の計25専門職大学院にアンケート調査を実施、教員の陣容や学費などについて聞いた。表は、その回答をまとめたもの。ここではアンケート結果や大学案内をもとに、概要を紹介する。

経営管理分野を中心としたビジネススクールが大半


 専門職大学院の設置基準では、設置できる専攻分野が限定されているわけではない。ただし、専門職大学院の前身である専門大学院制度では、「経営管理」「法律実務」「ファイナンス」「国際開発・協力」「公共政策」「公衆衛生」の六つの専攻分野が想定されていたため、02年度までに開設された六つの専門大学院は、これらの専攻分野をベースに03年度から専門職大学院に移行している。
 既設の専門職大学院10校は、多くがビジネス教育、特に経営管理分野を中心としている。欧米ではMBAを取得できるビジネススクールでの教育が確立されており、グローバル化する企業間競争において、国内でもこの種の教育システムに対する需要が急速に高まっているためだ。
 九州大学大学院医学研究院医療経営・管理学専攻を「医療分野に特化した経営」、芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科のMOTプログラムを「工学技術分野に特化した経営」と考えれば、これらもMBAに準じた経営分野の教育を行う専門職大学院だと理解することができる。

経営領域をさらに絞ったビジネススクールも登場

 新設の大学院においてもビジネススクールが目立つ。その中でも、経営学全般ではなく領域を絞ったコースや専攻の設置が増えるなど、専門分化の傾向が注目される。
 例えば、小樽商科大学大学院商学研究科では、アントレプレナーシップ専攻を置き、企業での新規事業の立ち上げ、ベンチャー企業設立、組織改革などを目指す人を対象に、企業家精神を涵養するMBA教育を行う。香川大学大学院地域マネジメント研究科は、四国で初のMBAプログラムということもあって、四国地域を強く意識したビジネススクールを設置する。
 早稲田大学大学院は、ファイナンスに重きを置いたMBA教育を行うファイナンス研究科(ファイナンススクール)を、宝塚造形芸術大学大学院は、ソフト産業などのデザイン分野を中心にMBA教育を行うデザイン経営研究科を、それぞれ設置する。日本社会事業大学大学院福祉マネジメント研究科も、福祉ビジネスに絞り込んだビジネススクールと考えていい。
 技術と経営の融合を図るMOTプログラムについても、特定の分野を設定する方向性が見られる。法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科には、MBITコースが設置されるが、技術一般ではなく、IT技術に絞り込んだMOTプログラムが提供される。京都情報大学院大学応用情報技術研究科でも、ウェブビジネスに特化したITスキル教育とマネジメント教育が行われる。さらに、構造改革特区で株式会社が設置するデジタルハリウッド大学院デジタルコンテンツ研究科でも、デジタルコンテンツの制作やプロデュースなどに特化した技術教育、ビジネス教育が行われる予定だ。

公的資格を意識したプログラム内容も

 高度職業人には、国家資格等を生かして職業に従事する人も含まれる。そのため、専門職大学院の制度設計においては、職業資格との関連も考慮に入れられた。その代表が04年度から開設される法科大学院だが、他にも資格との関係が深い大学院がスタートする。
 会計分野の専門職大学院(アカウンティングスクール)もその一例だ。公認会計士制度が04年度から改正される予定で、06年度からの新試験では、アカウンティングスクールで一定の科目を学んだ学生の試験科目が一部免除される。
 また、早稲田大学のファイナンス研究科では、MBA取得と並行して、証券アナリスト資格や不動産証券化に関連したアナリスト資格などの取得を視野に入れた教育プログラムの設置も検討されているという。
 一方、天使大学大学院助産研究科は、助産師養成を目的とした日本初の専門職大学院だ。修了後は助産師国家試験の受験資格が得られる。
 国家公務員、地方公務員を中心に、公共政策に関わる実務能力を養成する専門職大学院は着実に増えている。既設では、早稲田大学大学院公共経営研究科、04年度新設では、東北大学大学院法学研究科公共法政策専攻、東京大学大学院公共政策学教育部、徳島文理大学大学院総合政策研究科などが該当する。いずれも国際機関や中央省庁、地方自治体、公共性の高い機関などで活躍できる人材育成を目指している。



PAGE 14/26 前ページ次ページ
トップへもどる
目次へもどる
 このウェブページに掲載のイラスト・写真・音声・その他のコンテンツは無断転載を禁じます。
 
© Benesse Holdings, Inc. 2014 All rights reserved.

Benesse