ベネッセ教育総合研究所
特集 専門職大学院の本格展開
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[04年度新設校に聞く]
東京理科大学大学院 総合科学技術経営研究科
〜バイオ、ナノテクを含む科学技術全般の実践的マネジメントを学ぶMOT〜
実務者教育の事業体を目指す

 東京理科大学は、科学技術に関わる諸領域で活躍する技術者や企画立案に関わる人材を対象としたMOTを設立する。一般的にMOTは工学技術と経営とを結び付けた大学院教育だと理解されているが、同大学では、そこに理学(サイエンス)の領域を含めることで、他大学院との差別化を図る。研究科名に「総合科学技術」を冠するのもそのためだ。
 研究科長に就任予定の板生清教授は、「今後は情報や環境技術だけでなく、バイオ、生体、ナノテク、創薬といった分野の研究のビジネス化や商品化が非常に重要になる。これらはテクノロジーとサイエンスが一体化した分野であり、本来ならばサイエンスのSを入れて、MOSTと呼びたい」と強調する。
 一企業に勤務すると、社外や自己の研究分野以外の情報に触れないことも少なくないという。こうした現状を踏まえ、カリキュラムは先端技術の現状やトレンド、将来性などの情報をベースに、各技術分野の基盤から応用までの流れを組織的、系統的に学ぶ形をとる。
 設置科目は大きく、イノベーション科目、マネジメント科目、技術・産業論科目、関連専門科目、演習科目(フィールド・スタディ、プロジェクト研究)の五つに分かれるが、必修科目は「フィールドスタディI・II」「プロジェクト研究I・II」の4科目のみ。履修モデルとして、IT関連、環境関連、ナノテクノロジー関連で、いずれも企業のプロジェクトリーダーを目指す者と掲げるが、学生は入学時に各々のキャリアを考慮し、この三つの分野以外でも個別の履修プログラムを作ることができる。「どんな分野、どんな職種であっても、それぞれの場所でイノベーションを起こせる能力」を養成することが主眼だからだ。
 15人の専任教員の大半が実務家教員で、医療行政や大手企業の人事部門での実績を持つなど多彩だ。板生教授は、「日本では、大学の技術開発の多くが企業の後塵を拝していたが、それは大学と企業との人的な交流が少なかったことが原因。本研究科では企業の持つ最新の技術・知識を積極的に取り入れることによって、生きた教育を行いたい」と説明。実務に強い教員を集めたことで、単なる教育機関ではなく、実務者教育を行う事業体としての機能を持たせたいと語る。具体的には、MOT教育に関する出前講義や社員研修の受託などのビジネスを想定している。「学生が来るのを待っているだけでなく、これらの教育資産をパッケージにして、将来的には日本だけでなく世界にも提供したい」。

再就職、起業の支援も視野に

 初年度は、1年(昼間)コース10人、2年コース(夜間)40人、合わせて50人を募集する。企業での就業経験が出願要件ではないが、「企業で10年ほど働き、技術についてある程度の実務経験と知識があり、次のステップに上がりたいという意欲を持った人を対象としたい」と板生教授。
 授業では、どの科目もディスカッションを重視する。「技術系の人材の多くが人に分かりやすく説明する、サービスをするという意識が欠けている傾向にある」(板生教授)ことも一つの理由だ。基本的に授業は2コマ連続で行い、講義に続き集中的に討論する時間を設け、徹底的にコミュニケーション能力を鍛えるという。
 また、企業に出向いて学ぶケーススタディやプロジェクト研究、インターンシップも重視する方針だ。修了要件としては「ワーキングペーパー」が課される。修士論文のような形式やボリュームではないが、「プロジェクト演習」などを通して学んだことを、説得力のある文章にまとめるものだ。
 修了後、再就職や起業を考えている学生に対してのサポートも計画しているという。
 例えば、各教員が持つ幅広い人的ネットワークの中に学生を組み込み、キャリア形成を支援していくこともその一つ。卒業生との交流会、指導教員を窓口とする相談機能、メーリングリストの設置など、様々な方法を模索中だ。
 また、スイスの大手ヘッドハンティング会社、エゴンゼンダーインターナショナルとも連携する予定だ。同社のキャリア形成プログラムを導入したり、修了生を即戦力となる幹部候補として同社の顧客企業に紹介することも検討している。



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