ベネッセ教育総合研究所
特集 専門職大学院の本格展開
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[04年度新設校に聞く]
法政大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科
〜本格的な1年制ビジネススクール、専用求人サイトで“出口”も支援〜
IT専門の実質的MOT

 法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科は、経営と情報技術のコラボレーションを主眼にした1年制のビジネススクールだ。短期間で集中的に学ぶことにより、即実行可能なビジネスプランを作成し、新規事業を展開できる能力の育成を目指す。
 大きな特色は三つ。第一は2年制が基本の大学院教育で、本格的な1年制を導入した点だ。同研究科長に就任予定の藤村博之教授によれば、「ハーバードやスタンフォードといった伝統校を除き、最近開校した欧米のビジネススクールは1年制が主流になっています」とのこと。仕事の内容が半年ほどの単位で動くようになってきた近年のビジネス環境を反映したものといえる。
 1年間で質の高いビジネス教育が可能なのか。藤村教授は、同大学の社会人大学院生の実情を紹介することで、この問いに答える。例えば、92年度から開設している社会人対象の夜間大学院では、ほとんどの学生が最初の1年間で卒業に必要な30単位を修得するという。00年度に工学研究科に設置された1年制のITプロフェッショナルコースも、期待どおりの成果を上げているそうだ。「フルタイムの学生であれば、本研究科が要求する48単位は1年間で十分にクリアできるはずです。これからは1年制のビジネススクールが増えてくると思いますね」。
 第二の特色は、経営とITを結び付けた教育方針にある。藤村教授はその理由を、「景気が悪かったここ2、3年でさえ、企業のIT投資は減ってはいません。ところが企業経営と情報技術を有機的に結び付けることのできる人材が不足しているために、ビジネスを発展させることができないのです。まさにこのニーズに応えられる人材が必要とされています」と、説明する。
 そこで、同研究科ではMBAコースとMBITコースを設置し、カリキュラムの中心に、経営と情報技術のコラボレーション科目を配置。経営について学びたいIT技術者や、経営についてある程度の知識を備えた上で情報技術の仕組みを理解したい人などのニーズに応える形をとった。「一般的に技術と経営を結ぶ大学院教育はMOTと呼ばれています。しかしT(テクノロジー)の範囲が広すぎて、対象分野がはっきりしていないのが現状。本研究科は実質的には、ITに特化したより明確なMOTだと認識しています」(藤村教授)。

入学時からキャリアサポート

 同研究科は昼間に授業があるため、企業派遣以外の学生は、休職か退職した上で200万円以上の学費を自己負担して学ぶことになる。その間の所得損失も合わせれば、かなりコストの高い教育といえる。それだけに、学生が修了後の生活に大きな期待を抱くのは当然で、同研究科でも、“出口”を保証するシステムをいろいろ用意する。これが第三の特色だ。
 例えば、キャリアマネジメントの導入が挙げられる。自分が望む職業能力をどのように獲得し、どんなキャリアを形成したいのかをはっきりさせる「キャリアマネジメント講座」を入学時に実施。「職業生活の設計図」(藤村教授)を明確にさせた上で、カウンセリングなどで個人のキャリア開発をサポートする。
 社会人学生向けの求人サイトも立ち上げている。求人対象を同大学の社会人学生に絞り込むことで、企業への訴求効果を高め、学生と企業の双方が満足できる求人情報の提供などを行う。
 同研究科の授業は、「講義+演習(ディスカッション)」の2コマ連続が基本。研究室フロアには交流スペースが設けられ、授業終了後も、学生と教員、あるいはMBAコースとMBITコースの学生同士が日常的に意見交換できる。藤村教授はこうした環境を提供することで、「一種の塾の形になるのではないか」と期待する。キャリアマネジメント講座の後には全員で合宿を行い、ヒューマンネットワークの強化も図っていく。「全体がチームとして新しい事業に取り組んでいくようなもので、実は、この研究科自体がまさにイノベーションなのです」(藤村教授)。
 将来的には、イノベーション・マネジメント研究科と夜間大学院を統合し、ビジネスマンの能力向上のための総合的なビジネススクールの設立構想もあるという。



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