ベネッセ教育総合研究所
特集 国際化教育の現在
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海外大学との協定締結〜亜細亜大学とアメリカの大学との例を中心に〜
 留学プログラムの成功は、提携する大学との関係が大きく影響する。亜細亜大学は、80年代終わりにアメリカ・ワシントン州にある三つの州立大学と提携し、AUAP(Asia University America Program)を開始。このほかの国とも数多くの協定締結実績を持つ。ここでは、川口博久副学長の話を交じえ、亜細亜大学の例を紹介することで、締結までのプロセスと留意すべき点を確認する。
 海外の大学と連携した留学プログラムは、研究などで交流のあった教員同士の個人的つながりから発展するのが一般的だ。JAFSA、NAFSAなどの国際教育関連の研修会での教職員の交流がきっかけとなるケースもあるが、亜細亜大学では大使館の要請から協定締結に至ったものもある。
 留学プログラムは、期間によって大きく短期、中期、長期の3種類に分けられ、それによって取り交わす公的文書の内容も異なる場合が多い。
 夏季や冬季休暇の1〜2カ月を利用して実施される短期プログラムは、実施回ごとの「契約(Contractual Agreement」を、中・長期プログラムについては契約を交わすだけでなく「協定(Agreement Governing Exchanges)」を交わすのが一般的だ。
 短期プログラムは毎年、継続的に実施されるケースも多く、カリキュラムが同じである場合でも、毎年、提携先の大学と実施時期や費用について協議の上決定し、契約を交わす。当初、契約としてスタートした短期プログラムでも、提携先の対応やプログラム内容により、協定締結へステップアップすることが多い。つまり、契約内容がスムーズに進行し実績ができれば、協定締結への道が開ける可能性もあるということだ。
 5カ月(1学期)の中期や1年以上にわたる長期プログラムは協定書を作成する。その後、プログラム内容については担当する教職員が一堂に会して見直し、補足・修正を行う。
 契約・協定書に記載する事項は
(1)教員・学生の交換
(2)学術研究活動における協力関係
(3)資料・刊行物の交換
(4)交流プログラムの実施
(5)経費
の五つが柱となる。

把握すべき情報と協定に至るまでの流れ

 プログラムを成功させるためには協定を結ぶ前に、相手校に関して必ず確認すべきことがある。プログラムの趣旨を十分に理解し、誠心誠意打ち込んでくれる、信頼のおける担当者が現地にいること、研究などを通して個人的に密接につながりを持っている教員がいることなどである。  さらにその組織が
(1)大学の方針と方向性が明確である
(2)大学全体でプログラムをバックアップしようという姿勢がある
(3)教員と職員が一致団結し、協力体制が整っている
(4)実際にプログラムを運用管理する職員(人数や個々の意識など)が充実している
ことも要点となる。
 亜細亜大学では、こうした事項を把握した上で、関連する教職員で組織される国際交流委員会でプログラムの目的や内容を検討。正式にプログラムを開始する前の1年間を試験期間とし、教員と学生を派遣したパイロットプログラムを実施するのが通例となっている。
 パイロットプログラム終了後、引率した教員による報告書と学生の意見をもとに、再度、国際交流委員会で教育プログラムの有効性や学習・生活環境の安全性、施設の充実度などについて協議する。
 ついで、教科担当教員と教務の職員を交じえ、プログラムの期間、派遣人数、参加経費、奨学金、単位の交換など具体的な事項を決定。職員が実務的な事項を細かく契約書に落とし込む作業を行う。
 留学期間中の保険加入や賠償責任の規定、両大学の責任の範疇については明確に記載する必要がある。アメリカの場合、州ごとに法律が異なるため、それに即した内容とする。「こうした法律は、留学先での学生生活にも関連が深いため、事前研修で必ず学生にレクチャーしておく必要がある」と川口副学長は説明する。
 予算については、プログラム経費を抑えるためにも、事前に細目を洗い出し、時間をかけて折衝を行う必要がある。


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