ベネッセ教育総合研究所
特集 チャレンジする短大
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ケーススタディ
(1)広島文化学園
●呉大学短大部コミュニティデザイン学科
●広島文化短大コミュニティ生活学科/音楽学科
音楽学科で実技教育を見直す

 学校法人広島文化学園は、二つの短大で2002年度から04年度にかけて三つの地域総合科学科を設けた。
 第1号となったのは、呉大学短大部が経営情報学科を改組して02年度に設置した地域情報学科だ。「専門の核である情報処理を、時代のニーズに合わせ多面的に楽しく学べる内容に」という発想で、CGやCADを取り込み資格取得につながる教育を設計した。しかし学生募集で苦戦、「ニーズに合わせた素早い対応」という地域総合科学科の理念を踏まえ、3年目となる04年度に早速見直しを図った。
 ポイントは「情報へのこだわり」からの脱却だ。福祉・医療デザイン、観光デザインなどニーズが高い新たな分野を取り込み、学びの選択肢を拡大。学びたい分野と科目群を自由に組み合わせられる「フィールド&ユニット制」を導入し、初級システムアドミニストレータ、ホームヘルパー2級などの資格の取得を支援する。名称もコミュニティデザイン学科に改めた。
 同時に、新たな教育システム「エンカレッジ課程履修生制度」も導入。目的意識が希薄で将来の方向性が定まらない受験生や同学科への入学について迷っている社会人を受け入れ、正規のカリキュラムではなく、自己啓発や思考トレーニングを重視した教育を提供する。学科の正規学生に位置付け、エンカレッジ履修も単位認定する。自信と意欲ができた時点で正規カリキュラムに移行する。
 一方、広島文化短大では、生活文化学科と生活科学科生活科学専攻を03年度に改組し、コミュニティ生活学科を設置した。当初はファッション、食生活、キャリアの3コース制を敷いたが、より多様なニーズに応えるため、04年度からは「フィールド&ユニット制」を導入。ファッション、フードの2大領域を中心に、ビジネスやコミュニケーション、マナーなどを含めたライフデザイン領域で、多彩な科目を提供している。
 バラエティ豊かな教育分野は受験生にとって大きな魅力だが、完全に学生の選択に任せて履修させると、好きな科目をばらばらに選んで結果的に何も身につかないという危険性もある。そこで同学科では、従来のチューター制を発展させた「セミナー&チューター制」を導入。教員が自分の専門に関連した進路を希望する学生を担当し、セミナー形式で履修と就職について指導責任を負う。こうした改革が受験生に歓迎され、03年度、04年度とも「定員充足」という目標を達成した。
 04年度には広島文化短大の音楽学科も、名称はそのままに地域総合科学科として教育の内容とシステムを大きく変更した。プロの演奏家の養成だけではなく、これまで高等教育機関での受け皿がなかった地域の音楽教師を志す人、暮らしの中で様々な楽器を楽しみたいという人を想定した教育を行う。小笠原真也助教授は、「一流の演奏家を育てるという従来の音楽教育からの大転換は、地域のニーズを重視するという地域総合科学科ならではの発想です」と説明する。
 新しい音楽学科でも「フィールド&ユニット制」を採用。従来の楽器別の専攻制を廃止し、音大では必修が当たり前だった実技科目も選択科目にした。その上で、演奏家を目指す学生向けのより専門性の高い科目群や、趣味を深めるための科目群、指導者になるために必要な科目群などを用意し、それぞれの必要性に応じて選択できるカリキュラムを設定した。
 全科目を選択制にしたことで、例えばピアノの演奏家を目指す学生が、これまでなら専攻縦割りシステムのため選択できなかったフルートの実技科目を学べるようになるなど、専門家志向の学生にとってもメリットが生まれた。
 募集定員70人に対し3月中旬現在で80人が入学を予定、確かな手応えを感じているという。


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