ベネッセ教育総合研究所
特集 リーダーシップが生きる職員組織
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トップのリーダーシップとそれを支える組織・機能

 トップへの権限集中によって、国立大学法人は従来はなかった攻めの戦略を推進してくるだろう。そのような攻撃的マネジメントのスタイルに対して、私立大学側のトップとしても対応しないわけにはいかない。まさにマネジメントの大競争時代の開幕である。
 この過酷な競争の時代にあって、組織のトップからミドルを経てボトムに至るまで、マネジメントの各層がそれぞれどのように機能すべきなのか。それを担うためには各層にどのような人材が求められ、実現するためにはどのような課題が解決される必要があるのか。
 これらについて、
 (1)経営トップ(理事長・学長)
 (2)トップをサポートする経営層(理事・副学長・役員)
 (3)行政管理職層(部長・課長などのアドミニストレーター)
 (4)現場の専門職層
の4層に分けて解説をする。

(1)経営トップ(理事長・学長)

 経営トップの資質や能力について語るとすれば、営利・非営利を問わず組織のトップとしての共通のコンピタンスというものが考えられる。それは、大きくとらえれば総合的なマネジメント能力であろうが、なかでもトップとして最も注目されるべき能力はリーダーシップにほかならない。
 リーダーシップにもさまざまなタイプとそれぞれの個性があり、それは組織環境ごとに適・不適があるので、一概にどのタイプが望ましいと言い切ることはできない。
 しかし、どのような組織にあっても今日ほぼ共通して言えることは、「ビジョナリー・リーダー」、つまり自らが組織の革新的なビジョンを示して構成員全体に向かうべき方向を指し示す能力を持つ人物が求められるということだ。変化が激しく予測が困難な今日の時代背景にあって、トップが組織の向かうべき進路を大胆に指し示すことの重要性はいうまでもない。とくに非営利組織の代表格である大学にあっては、組織の目的と使命、目標を、構成員および組織外部のステークホルダーが理解し納得するビジョンとして提示できるリーダーが切望されている。
 このようなトップを実現するための制度的なしくみは整っているのだろうか。
 国立大学法人、公立大学法人の場合には、学長選考委員会によって、大学のマネジメント能力を加味した学長選考基準が生かされる形で、適任者を選び出す方式が採られる。これに対して私立大学では、従来どおり学長は教員を中心とする大学構成員の選挙によって実質的に決まるところが多いが、これは経営トップとしての資質を判断材料にしているとは到底思えない。理事長にしても、創業者一族の世襲であるケースが少なくなく、同様の問題がある。
 このように比較してみると、現在の制度・慣行を維持していくとすれば、私立大学はトップマネジメントの人材確保の点で後れをとることは必至であり、それが私学の衰退につながるというシナリオも架空のものではなくなるかもしれない。
 逆に国立大学法人の場合、前述のように権限が過度に集中する運用方式の下では、学長選考委員会の判断が極めて重要な意味を持つ。
 もう一つ指摘しておきたいのは、トップマネジメントの開発・養成システムの必要性についてである。ビジネススクールにおける「トップマネジメント・セミナー」のような本格的な研修の機会が存在せず、トップは日常の職務体験の積み重ねでしかプロフェッショナルの水準に到達する方法がないという現状は、なんとしても改善されなければならない。


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