ベネッセ教育総合研究所
特集 リーダーシップが生きる職員組織
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(2)トップをサポートする経営層(理事・副学長・役員)

 規模が小さい組織にあっては、トップ(理事長、学長)がすべての業務執行と新たな展開についての戦略策定を自ら手がけることができるかもしれない。まさにトップによる手作りの大学である。単一学部構成で学生数が千人程度までの大学組織などでは、この形態が現実的であろう。
 しかし、それを超える規模と学部構成の複雑な環境では、トップの下に常勤役員としての理事や副学長などを任命して、担当業務領域ごとに業務執行の管轄権限を担わせることが一般的である。いわば担当役員制である。
 トップをサポートするこれらの経営層を効果的に機能させるための課題がいくつかあるが、それは横の関係と縦の関係に分類できる。横の関係とは、担当分掌の切り分けの妥当性や、分掌間の権限などの明確化といった問題である。縦の関係とは、トップからの権限委譲の実態についての問題である。トップは常勤役員の職務担当領域に関しては責任と権限を可能な限り与えるとともに、常勤役員間の権限を公平なものにする努力が必要である。
 一方、常勤役員の側では役員会での合議による最終決定という制度的枠組みの構築など、組織全体のトータルな立場に立った戦略的意思決定を心がけるとともに、トップおよび他の役員との円滑なコミュニケーションが求められる。その意味でも、役員会をマネジメントの実践が担保される場とするよう心がけなければならない。
 人選についてはトップが行うが、歴史の古い私立大学では、教員のみで常勤役員を構成するといった古い体質を維持しているところが少なからず存在する。一方、国立大学法人では、学外からの人材や職員トップなど広く適任者を登用して最強の経営層を構築することを保証する制度となっており、ここでも経営の巧拙による格差が開く可能性がある。
 国立大学法人のトップに特に望みたいのは、トップに対してきちんとものが言える独立自尊型の人材を役員層に配置するという配慮である。公・私立大学も含めて、組織のトップは、自分のスタイルで自由に経営ができる内部組織環境を常に欲しており、ややもすると、無意識のうちに自分の周りにイエスマンを配置して独断専行も可能な体制をつくりがちとなる。しかし、そういうトップは「裸の王様」のようなものである。特に国立大学法人の場合、内部チェック機能が働きにくいシステムだけに、一層の警戒が必要である。
 企業の社外役員などと同様に、国立大学法人には学外の非常勤役員が加わる制度設計となっており、それなりの経営常識が作用する環境を作ろうとしていることは評価できる。しかし経験的にいうと、非常勤役員の立場でのコミットメントには明らかに限界があり、その機能発揮には問題がつきまとうことは、企業の社外役員制度の場合と同様なのである。



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