ベネッセ教育総合研究所
特集 リーダーシップが生きる職員組織
日本福祉大学
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執行役員制には政策課題吸収の狙いも

 決定された政策を確実に実行するための仕組みが「執行役員制」だ。執行役員とは、意思決定を行う取締役に対して、実際の政策執行に責任をもつ役員のこと。政策決定と執行が一定の緊張関係を保ちながら組織体を統治する仕組みで、民間企業で多く見られるシステムを導入した。
 近年の大学の機能は、高度化・複雑化が進み、寄付行為で定めた人数の理事だけですべての領域の執行責任を負うことが困難になっている。また、執行責任は個人に帰属しないため理事会の全体責任となり、多くの会議体での議決が必要になる。こうした状況を打開するために、同大学では、以前からある理事の担当責任制を発展させ、執行権限を持つ「執行役員会」を別に整備した(図表2)。

図表2 執行役員会・事務局機構

図表

 「執行役員会」は、組織上は理事会に属するが、経営領域の執行機関という位置付けだけではなく、関連する教学領域も含めて責任を負う。経営管理領域、社会連携領域、教学運営領域、学校経営領域の4領域に10の分野が設定され各分野に任期2年の執行役員が1人ずつ配置される。現在は、教員5人、職員5人で構成され、各領域に統括理事がいる。
 執行役員には理事会から日常執行権限が委譲されている。また、例えば教学運営領域の研究国際分野を所管する執行役員が「国際交流センター」の長を兼務するなど、教学との連携を重視した組織体制となっている。
 執行役員制は当初の2年間は試行期間という位置づけでスタート。最大のメリットは、財政面も含めて経営と教学すべての領域の執行状況が把握できるようになったことだ。「業務を直接掌握している執行役員が現場から政策課題を吸い上げて問題を提起することで、理事会や政策推進会議で地に足がついた議論ができる」と篠田理事は期待する。
 問題は、予算や事務の従来の管理システムとどう整合性を図るかという点だ。執行役員会は職員だけでなく教員も含めて構成されるため、これらの業務や人事の執行体系を整備する必要がある。05年からの本格運用までには、領域や分野の見直しも含め、執行役員の体制をさらに強化したいという。



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