ベネッセ教育総合研究所
特集 顧客・応援団としての卒業生
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【レポート2】早稲田大学・ファイナンス稲門会
社会人教育で連携
親睦団体の枠を超えた新しい組織
 早稲田大学の卒業生による「ファイナンス稲門会」が、日本橋キャンパス内に04年3月発足した。金融に関心のある卒業生を会員に募り、より実践的な学習を進めていこうというもので、金融ビジネスの第一線で活躍する卒業生が講師を務める。親睦団体という従来の卒業生組織の枠組みを超え、大学と卒業生の新しい関係を築くものとして注目される。
ファイナンス研究科の開設を機に発足

 早稲田大学は今年4月、東京・日本橋に社会人教育の拠点として専門職大学院ファイナンス研究科(NFS)を開設した。入居している日本橋1丁目ビル(コレド日本橋)は、再開発が進む日本橋地区の中心部に位置し、地下鉄3線が交差するなど交通の便も良い。
 日本橋は金融ビジネスの中心地で、近辺で働く早稲田大学卒業生も少なくない。大学側では、ここをキャンパスとして利用するだけでなく、卒業生同士が交流して能力を高め、ステップアップを図ってもらう場所にしようと考えていた。
 NFSと、併設されている早稲田大学ビジネス情報アカデミー(NBA)は、ともに金融を専門分野とする社会人教育機関であり、日本橋キャンパスには銀行や証券会社など、金融ビジネスの現場を担う人々が講師や学生として集う。このようなキャンパスの特徴を生かし、卒業生同士の交流を図る仕組みとして04年3月、ファイナンス稲門会は発足した。
 ファイナンス稲門会は、早稲田大学の卒業生が互いに知識を高めるとともに、相互に交流を図ることを目的とする。5月末現在で約600人の卒業生が参加している。  卒業生が知識を高めるために、「セミナー」と「スクール」という二つのプログラムが用意された。いずれも受講料は原則無料。講師は金融ビジネスの現場を熟知した卒業生で、受講生はファイナンスに関するより実践的な知識を吸収することができる。
 「セミナー」は、ファイナンスに関心を持つ幅広い卒業生が対象で、タイムリーで多くの人が関心を持つような話題を単発で取り上げる。1回目は5月16日、「資本市場の活性化と激変期における企業価値の創造」をテーマに、フィデリティ投信副会長の蔵元康雄氏が講演した。
 今後は、経済同友会副代表幹事の渡辺正太郎氏、早稲田大学前総長の奥島孝康氏などが講演する予定だ。
 セミナーが1回の講演で完結するのに対して、「スクール」は一つのテーマのもとに5〜6回の講義を組み合わせて実施する。予定されているテーマは、「景気見通し」や「金融問題」などで、セミナーに比べて専門的なテーマを扱う。04年秋スタートの予定で、受講者には修了証を発行することも考えている。

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5月16日に開催された第1回セミナーには、80人近くが参加した

能力向上という目的意識を持ち集う

 ファイナンス研究科の開設準備のため、卒業生と接触する機会が多かった同研究科の大村敬一委員長は、「卒業生たちが集い、意見交換を行う場がほしいという期待と願望を感じた」という。同キャンパスでは、早稲田大学の卒業生以外にも広く門戸を開いて社会人教育を行っている。「その枠組みのなかに、『早稲田の卒業生』という束ね方があってもいいのではと考えました」と、ファイナンス稲門会設立の動機を説明する。
 早稲田大学の同窓会組織には、出身学部やゼミ、地域などの単位で数多くの「稲門会」がある。その多くが親睦を目的に運営され、大学との関係もそれほど密接ではない。これに対してファイナンス稲門会は、単なる交流にとどまらず、「金融」というキーワードで集い、互いに研鑚を積んで能力を高めていこうという目的意識を持つ点に特徴がある。
 通常、大学や大学院などのセミナーに参加しようとすれば、受講料がネックになるが、ファイナンス稲門会のセミナーとスクールには受講料が原則かからない。「稲門サークル」という卒業生同士の交流組織もあり、知識の向上と人脈形成との両面で大きなメリットがある。
 卒業生からの反応も上々だ。3月17日に行われたファイナンス稲門会の設立総会には、500人の会員のうち300人が参加。その後の懇親会にも200人が参加するなど、大きな反響があった。卒業年次別でも70〜90年代をコアとして、あらゆる年齢層の卒業生が参加している。


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