若手を巻き込む仕組み
このように、卒業生の結束力と機動力が突出する慶應義塾でも、数年前から危機感が広がっているのだという。他大学と同様、若い卒業生が三田会に入らない、会合に参加しないという声が各組織から聞こえだしたからだ。田中理事は、これが在学生の帰属意識の低下の延長線上にあると分析する。「早慶戦では、かつては学生席のチケットを求めて売り場に行列ができたのに、今では空席が目立ちます。ラグビーに人気を奪われたのかというと、そうでもない」。
柔軟な履修システムが浸透し、クラスという基盤がなくなっていることも要因に挙げる。「われわれの頃はクラス、サークル、ゼミという3種類の仲間がいるのが当たり前で、卒業後もそれぞれのネットワークを維持していますが、今やクラスがなくなり、サークルにも入らない学生が増えています」。
従来「好対照」と指摘されてきた慶應と早稲田の卒業生の帰属意識についても、「今やあまり違いはないのでは」とみる。「以前ならどちらを目指すかという受験生の意思が明確で、学生はおのずと『慶應タイプ』『早稲田タイプ』に分かれていました。今は入れればどちらでもいいという受験生も多く、均質化とアイデンティティの薄さにつながっているのでは」。
こうした変化を受け、近年は大学を挙げて若手巻き込み作戦を展開している。その一つが塾員対象のものなどホームページの充実だ。
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