ベネッセ教育総合研究所
特集 顧客・応援団としての卒業生
 
PAGE 13/18 前ページ次ページ


卒業後も同じシステムを使えることがポイント

 拡大していくサイトの運営に忙しく、「一時は本業のシステム開発に手が回らなかったほど」と小久保社長。00年に株式会社化した後はサイトの充実を図る一方で、そこで培ったコミュニティサービスの運営ノウハウを生かして、大学による卒業生のネットワーク化の支援にも乗り出した。
 大学は、教学や研究面での必要性から、いち早くインターネットを導入した組織の一つだ。近年は履修登録や就職活動など学生支援のシステムも浸透し、学生はインターネットの恩恵をフルに享受しながらキャンパスライフを送る。ところが、卒業と同時に大学のシステムが使えなくなってしまうケースがほとんどで、母校との関係が希薄になる。小久保社長は「毎日顔を合わせる在学生よりも、物理的な距離が生じる卒業生にこそインターネット環境を提供し、コミュニケーション手段を確立すべきではないでしょうか」と指摘する。
 同様の認識を持つ大学も増えている。早稲田大学では、4年前から卒業生ネットワークの構築を計画、2年前から同社との共同開発を進めた。それが校友会オフィシャル・コミュニティサイト「稲門コミュニティ」として結実し、03年度から本格運用が始まった。
 同社のノウハウが反映されたサイトの特徴は、基幹システムから卒業生を切り離すのではなく、大学のネットワークシステムに組み込み一本化したことだという。「在学生と卒業生では必要とする情報が異なるので、ユーザーの目に触れる表層の部分では別々のサービスが動いていいし、むしろそうあるべきです。でも、卒業後も同じメールアドレスを使えるとか同じデータベースにアクセスできるということが実現しないと、結局は使い勝手の悪いものになってしまいます」(小久保社長)。
 「稲門コミュニティ」では、卒業生がゼミの恩師や在学生と情報交換するための掲示板を設けることなどが可能だ。こうした仕組みによって、「在学中」と「卒業後」がスムーズに連続し、教職員も一緒になった「大学全体のコミュニティ」を作り出すことが可能になる。
 「稲門コミュニティ」のおよその登録者数は、学生が4万人、教職員1万人、03年度の卒業生が1万人でそれ以前の卒業生は2万人。稼働して2年で8万人が参加するネットワークが形成されているわけだ。小久保社長は、「このシステムが本当に機能し始めるのは、スタートした去年の1年生が卒業する3年後以降になるはずです。大学で4年間使ったシステムの中で、卒業後も違和感なく後輩や恩師と交流できるメリットを実感できるはずですから」と解説する。



PAGE 13/18 前ページ次ページ
トップへもどる
目次へもどる
 このウェブページに掲載のイラスト・写真・音声・その他のコンテンツは無断転載を禁じます。
 
© Benesse Holdings, Inc. 2014 All rights reserved.

Benesse