ベネッセ教育総合研究所
特集 顧客・応援団としての卒業生
 
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卒業生同士の会話は、大学にとって情報の宝庫

 卒業生を巻き込むネットワークを開発する上で重要な第一歩は、どんなシステムを作りたいかを明確にすることだという。「そのシステムを使って何をやりたいのか、それによって設計が違ってきますから」と小久保社長。早稲田大学との共同開発でも、2年間のうち1年以上は大学の要望を聞くことに費やした。サイト運営を通して同窓生のコミュニケーションの実態や大学への要望を熟知している立場から、ニーズと技術的な可否を整理する中で、「そのようなサービスは、ニーズや費用対効果の面で考えると削った方がいいのでは」とアドバイスすることも。
 同社では現在、立命館大学など数校のシステム開発を手がけるほか、打診や説明の依頼を受けている大学も10数校あるという。
 大学が卒業生ネットワークの構築で期待しているのは、一般的には寄付など財政的な支援や在学生への就職の支援、志願者確保といったところだろう。小久保社長はそこに理解を示しつつも、「卒業生に一方的に期待するだけではうまくいかない。大学の側が、応援してもらえる雰囲気を作り、積極的に情報を集めたり提供したりする必要がある」と指摘する。
 同窓会サイト「この指とまれ!」では、280万人の利用者の情報が飛び交う。「たわいもない会話の中に、もう一度こういう勉強をしてみたいとか、同窓生の一人がある分野で活躍しているとか、教育サービスを提供する大学にとって有益な情報も含まれているはず」と小久保社長。大学改革に対する具体的な意見や要望にしても、卒業生ならではの愛情と真剣さがこもった声が出てくるのでは、という指摘はうなずける。
 「率直な意見を自由に出し合える雰囲気のコミュニケーションの場を提供することが大事です。卒業生を囲い込み大学を中心にした放射線で結ぶのではなく、卒業生という個人が現在の大学を構成する仲間たちとフラットに結ばれる場を用意すれば、喜んでそこに参加し、情報も集まってくるはず」
 同社では、「この指とまれ!」でのノウハウを基盤に、同窓生同士の関係にとどまらない幅広いコミュニケーションを支援するサイトも立ち上げた。小久保社長は「社会はよりフラットな構造に向かっています。そうした変化に対応できるネットワークを構築することが、これからの大学と卒業生との関係においても大切ではないでしょうか」と話す。



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