ベネッセ教育総合研究所
特集 顧客・応援団としての卒業生
 
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母校への誇りと感謝で活動

 斎藤氏は通算で10年間同窓会に関わり、現在は本業で多忙を極める中、「1割近い時間を活動に注いでいるのでは」と笑う。かつてはさほど熱心な同窓生ではなかったというが、6年前の組織部担当副会長への就任が転機に。「忙しい中でやるからには成果を上げなければ意味がない」と考えた。
 その頃試みたのが、ICU祭での「同窓会の部屋」の開設だ。在学生に卒業生のことや同窓会活動について知ってもらうための企画だったが、訪れた人の大半は同窓生だったという。これを機に、在学生へのアプローチにはもっと工夫が必要だと考えるようになった。
 斎藤氏がこれほど熱心に同窓会活動に取り組む理由は明快だ。「ICUで学んだことを誇りに思うし、今の僕があるのはICUのおかげだと感謝しているから」。大阪で生まれ育った同氏は、牧師だった祖父と父の知人を通してICUのことを知る。高校生の時に上京して三鷹のキャンパスを訪れ、「一目惚れ」。迷わず受験した。在学中、担当教員の勧めでメキシコとアメリカに留学する機会を得た。
 リベラルアーツによる全人教育を掲げる大学で同氏が学んだのは、「ものの見方や考え方、人との付き合い方など、まさに人間として生きていく上での根幹」で、それが今の仕事にも生かされているという。これからもずっと誇りに思える素晴らしい母校であってほしい、そのために卒業生としてできる限りの支援をしたい、と考えている。  仕事で関わってきた数多くの企業との比較を通じて、大学一般の問題も理解している。「大学にも経営という概念を持ち込まないと大競争時代を生き残れない」と指摘、プロの視点と手法で経営に関するアドバイスができると自負する。
 「基本は、大学としての魅力を徹底的に高めること。ICUの方向性を考えると、やはり研究ではなく教育で存在感を打ち出すべきです。これからも、教養学部というオリジナルな学部で全人教育に力を入れ、グローバルな視野を持つリーダーとして社会に貢献できる人材を育てていく必要がある」
 そんな教育を担うために教員はベストを尽くしているか、職員は教員を支え学生サービスに努めているか、厳しく客観的な視線も向けていきたいという。
 「素晴らしい大学であり続けるためには、いい学生を集めることが大事。いかにしてたくさんの志願者を集めるかに腐心する大学もありますが、数ではなく質の勝負をすべき」と強調する。同窓会役員と大学幹部による年1回のAA(Alumni & Administrator)会議では、学生募集の状況についても情報や意見を交わす。
 近く、大学の魅力を高めるために、同窓会としてできることをまとめ、次のAA会議で討議する予定だ。「同窓生の中には、有力高校の教員が100人くらいいる。その人たちを中心とする同窓生全体に働きかけて、ICUの教育理念にふさわしい生徒がいたらぜひ送り出してほしいと呼びかける活動も展開したい」。ときには大学にとって耳の痛いことも言わざるをえない。「大学に限りませんが、組織の問題を内部にいる人が客観的に捉えるのは難しい。卒業生というファミリーの一員だからこそできる指摘もあるはず」と話す。
 斎藤氏は04年6月から会長職2期目に入った。慣例的に任期は2期までとなっており、残された2年間で「同窓生、在学生、大学それぞれにとって魅力ある同窓会」への改革に全力を注ぎたいという。



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