ベネッセ教育総合研究所
特集 今、なぜキャリア教育か
PAGE 3/20 前ページ次ページ


すべての分野、科目で社会的レリバンスの明示を(小杉)

松高 キャリア教育が抱える問題点として、大学教育全体の中にどう位置付けるかということがあります。キャリア教育を他と切り離すのではなく、教養科目や専門科目とどうリンクさせるかという視点が必要ではないでしょうか。
小杉 大学は、すべての教育の内容と職業とのレリバンス(関連性)を明確に意識すべきだと思います。どの科目にも実社会との密接な結び付きがあるはずで、そこをしっかり認識して授業をすることは広義のキャリア教育に含まれます。
 例えば観光学科であれば、ホテルで働くことを想定したカリキュラムをつくり科目の内容を工夫することで、実社会とのレリバンスを明示できます。これは実学に限りません。文学も、文章を理解し活用することでコミュニケーション能力を磨くという側面から捉えることで、職業との関係を明示できます。
 私たちが、ヨーロッパと日本で卒業後4年たった人を対象に行った調査では、ヨーロッパでは「大学で学んだことが今の仕事でとても役立っている」と捉えているのに対し、日本人は全く逆の意識を持っていることがわかりました。そもそも日本では、大学教育は社会に出て役立つというものでなくて当たり前という意識が、大学の側にあり、学生も同じ認識で授業を受けているのではないでしょうか。そこを反省し、職業とのレリバンスという観点から教育を再構築、再評価し、学生に示していくべきだと思います。
藤田 実際に学生からもそのような要求が出るようになっています。学生に対して「自分で考えろ」と言うことが通らない時代ですから、学問と実社会との関係性を授業の中に明示的に組み込んでいくことは、絶対に必要です。その意味で、キャリア教育には現代的教養教育ともいえる要素が含まれていると思います。
小杉 社会のあり方を理解するという点において、まさに現代的教養教育です。しかも将来を見つめ今なぜ勉強すべきなのか考えさせ、意欲を引き出す教育でもあります。


PAGE 3/20 前ページ次ページ
トップへもどる
目次へもどる
 このウェブページに掲載のイラスト・写真・音声・その他のコンテンツは無断転載を禁じます。
 
© Benesse Holdings, Inc. 2014 All rights reserved.

Benesse