ベネッセ教育総合研究所
特集 今、なぜキャリア教育か
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連携を通して高まった、キャリア教育への関心

 このような連携プログラムを実現していく過程で、進路部長としての立場だけではなく、多摩高進の事務局長としても多くの大学・短大の教職員と、連携教育の目的、参加する生徒への支援態勢、成果等についての意見を交わす機会を多く持つことができた。特に最近はキャリア教育に関する質問を受けることが多くなった。
 それは、
(1)連携教育は生徒のキャリア形成にどのような効果があるか
(2)高校ではどのようなことに重点を置いて進路指導(キャリア教育)を行っているのか
といったものである。また高校での進路指導の経験を踏まえて、大学のキャリア教育に対して何か提言してほしいという要望も受ける。
 このうち、(1)の質問に対する私の答えとして、生徒の進路選択のミスマッチを防いだり、自分の得意分野をさらに伸ばせることが挙げられる。例えば、映画研究会の部長を務め映画製作に関心を持っていたある生徒は、2年次に大学で映像論等の授業を受けた。成果はその後製作し、文化祭で上映した映画に色濃く反映され、特に3年次の作品は、高校生の作品としては大変レベルが高いと専門家からも評価されるほどの出来栄えであった。その生徒は大学の授業に対する感想を「自分の関心のある分野についてどれだけ学べるのか疑問を持っていたが、期待した以上の内容で、関心のある分野について深く学べ、今後にも役立てることができた」と述べている。
 次に(2)について、最も力を入れてきたことは、生徒に自分の進路について考える機会を積極的に与え、体験させることである。私が受け持った定時制の学年では、1年次に多摩地域にある工場の見学を行い、社会に触れさせることから進路指導が始まった。そして4年次の修学旅行では、京都府の関西学術文化都市にある「私のしごと館」で適性検査を受検後、約40の仕事をプロの指導の下で半日体験させた上で、体験の内容と感想についてレポートを書かせている。
 また、進学を志望する生徒には、「時事問題解説」という課外講習を行っている。これは私が25年間にわたって多摩地域の勤務校で継続してきた講習で、毎回、新聞・雑誌の記事から講習にふさわしいと思われるものを取り上げ、事前に生徒に配布。生徒はそれを基にレポート用紙1枚に要約と自分の意見をまとめる。当日そのレジュメを全員に印刷して渡し、意見を交わす。そして最後に私から全体的な説明を行うというものである。その目的は単に受験対策といったものではなく、「社会理解」とともに将来の自己実現の基礎になると思われる「読解力・思考力・文章力・表現力」の育成である。


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