ベネッセ教育総合研究所
特集 コンペ型事業を考える
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修士、教員養成でも実施

 2本目の柱である「社会ニーズにマッチした創造的な大学院教育の展開支援」では、創造性豊かな若手研究者を育成する取り組みを重点的に支援する「『魅力ある大学院教育』イニシアチブ」が05年度に始まる。修士課程と博士課程の両方が対象。学部を対象とする特色GP等、博士課程対象の21世紀COE、専門職大学院GPに、研究者育成の修士課程を支援する新たなプログラムが加わり、学部から大学院までの支援メニューが出そろう。
 支援対象の取り組みについては、「研究プロジェクトをリードできる資質・能力を培う体系的なプログラム」「新分野、異分野にも対応できる柔軟な発想力を養うカリキュラム」「学生自らが課題を設定して探求する研究手法を修得させるカリキュラム」などが例示されている。
 3本目の柱「資質の高い教員養成を目指す高度・実践的な取組支援」では、「大学・大学院における教員養成推進プログラム」を05年度から実施する。教員の質の向上は文科省の重要課題の一つで、教員免許の更新制、専門職大学院の設置について中央教育審議会に諮問。これら制度面の改革には時間がかかるため、現行制度の下でもできることとして、大学の教育改善・強化を促すことがこのプログラムの狙いだ。
 教員免許の課程認定を受けている536大学(学部。04年度4月現在国立77、公立42、私立417)を対象に、「実践的な教育を目指したカリキュラム開発」「経験豊かな現場教員や地域の様々な教育活動の指導者の積極的活用」「教育委員会等との連携・協力による教員研修の実施」などの選定を予定している。

競争的配分にシフト?

 これらのプログラムに共通するポイントとして、文科省は
(1)国公私を通じた大学支援
(2)競争原理による資金配分
(3)プロジェクト単位での選考
の3点を挙げる。
 従来の高等教育行政では、国が直に運営する国立大学、地方交付税で財政支援する公立大学、私学助成金を配分する私立大学など、設置形態で分け、それぞれの予算の枠内で支援していた。厳しい国家財政の下、国公私同列での競争を促し、結果に基づいて重点的に予算を配分しようというのが、これらコンペ型事業の狙い。
 文科省がこうした施策の根拠とするのが、各審議会等の提言だ。財務省の財政制度等審議会は、04年度の「予算編成の基本的考え方について」で、高等教育への公的支援について「国立大学に対する財政措置や私学助成等の既存の支援策を見直し、国公私を通じた競争原理に基づく支援へシフトさせる必要がある」と提起。05年度予算編成についても「既存の機関補助による支援策から、国立大学間、国公私を通じた競争原理に基づく支援へのシフトを促進」という文言を入れた。経済財政諮問会議でも同様の提言がなされている。
 文科省では「コンペ型事業は06年度以降も、プログラム数、予算総額とも拡充させたい」とする一方、これらの提言にある「競争原理に基づく支援へのシフト」については、大学の反発にも配慮し、慎重な姿勢を示す。「一部に競争原理を入れながら、教育・研究に対する必要な機関補助は従来通り充実させたい」との立場だ。
 実際に“シフト”は起きているのか。「04年度は、国立大学の運営費交付金が1%カットされたが、新たな特別教育研究費制度で全体の予算は増えた。私学助成も減らしておらず、これらのプログラムのために他の予算を削るということはしていない」と説明する。  文科省からの財政支援は、プログラムごとに助成期間が決まっているが、年間の額は、申請内容の査定に加えその年度の予算枠によっても変動する。21世紀COEの場合、前年度までに採択された拠点も含め、04年度の配分総額は申請総額の58%にとどまっており、採択されたからといって大学の計画通りに進められるとは限らない。


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