ベネッセ教育総合研究所
特集 コンペ型事業を考える
 
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評価の一次資料として申請書は重要

 04年度の「特色GP」の申請件数は534件で、03年度より130件減少した(図表)。共同の取り組みの申請数はほぼ同じだが、個別の取り組みが大きく落ち込んだ。

図表

 このうち国立大学は、統合により大学数が減ったため、申請率からいえば03年度とほぼ同じ水準とみることができる。一方で私立大学の申請が極端に減り、それが全体の減少につながった。
 テーマ別に見ると、テーマ1、2、3の申請数が減り、テーマ4、5の申請数が増加。中でもテーマ2「主として教育課程の工夫改善に関するテーマ」が、前年度比6割程度と著しく減少した。これらの結果について工藤氏は、「私大には単科大学が多く、再挑戦として取り組むべきプログラムが少なかったのではないか。また、一部の報道で国立大優位とされ、私大にあきらめムードが漂った可能性もある」と分析する。採択されなかったプログラムを次年度以降に再申請することも可能で、今回このケースは1割を超え、採択されるケースもあった。
 申請する大学側にも工夫がみられるようになった。工藤氏によれば、「03年度は申請書に余白を残す大学が目についたが、04年度はデータの添付が認められたこともあって、各大学とも内容が充実した。ヒアリングでは、パワーポイントで動画を使うなど、アピールに力を入れる傾向がみられた」という。
 行政文書の作成やプレゼンテーション能力に長けた大学の方が採択されやすいのではないかとの見方に対して、工藤氏は「教育プログラムが実体を伴ったものかどうかは、一次資料である申請書で判断するしかない。いい取り組みならば、その内容を評価者にきちんと伝えるように努力すべきではないか」と話す。その上で、個人的意見としながらも、「採択されたプログラムの申請書には、教育目標が明確に示され、育成すべき学生像やカリキュラムデザイン、有効性などが、教育目標と関連づけて書かれていた」と印象を語る。  採択された取り組みは、03年度と同様、全国4都市で開催されたフォーラムで大学関係者などに紹介した。また、採択事例は冊子にまとめ、高校にも配布する。特色GPの主な目的は大学教育の改善にあるが、高校生に与える影響も大きい。「特色GPなどのプログラムは、偏差値とは異なる、大学を評価する指標として大切だと認識している」と話す。
 工藤氏は「大学基準協会には、大学評価の実績があり、それを特色GPの立ち上げにも活用することができたと思う」と説明。一方で、教育評価の難しさも実感しているという。「評価というのはある程度評価者の主観的判断に委ねざるを得ない。従って、評価者の資質向上に努め、共通理解を深めていくことが必要。具体的な評価にあたっては、いかにその取り組みの質に切り込んだ評価ができるかが重要となる。現代GPなど新たなプログラムも登場しているので、今後は評価方法を整理する必要性も出てくるのではないか」と課題を指摘した。



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