ベネッセ教育総合研究所
高校改革のいま
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受験機会の複数化に伴い、独自問題の作成が拡大

 入試改革の二つ目の特徴は、受験機会の複数化である。従来は「推薦入試+一般入試」という形が一般的であった。しかし推薦入試を受けるには中学校長の推薦が必要な上、生徒会活動や部活動などで活躍した生徒、スポーツ、芸術面での実績を持つ一部の生徒に限られていた。
 そこでそのような推薦入試を見直し、学力以外の実績や能力を持った生徒をより多く集めることで、各校の特色化につなげようとする動きが各都道府県で顕著となった(図表2)。

図表

 具体的には、中学校長による推薦を取りやめ自己推薦にするか、推薦入試自体を廃止して、一般入試を前期と後期(名称はI期入試+II期入試、特色化選抜+一般選抜など、都道府県により異なる)の2回に分けて実施するケースが多い。
 00年度入試で群馬県(※2)が導入して以来、急速に広がっており、04年度には福島、神奈川、長野、徳島が新たに実施、05年度には青森、秋田、埼玉、岡山などが加わる予定となっている。ちなみに東京都では、98年度に従来型の推薦入試を残しながら一般入試の受験機会を複数化した。
※2 群馬県では、県立高校入試を従来の推薦入試にあたる『前期選抜』と、一般入試にあたる『後期選抜』とに分け、前期選抜の定員は20〜40%を標準として、各高校が決定する方式
 一般的に前期入試は、各校が独自の選抜方法で実施する。教科試験以外の面接、作文、実技なども自由に設定できるほか、各高校が独自に作成する独自問題(※3)を課すところもある(図表3)。とりわけ独自問題では、「総合問題」として、教科横断的な知識を問うケースが目立っている。
※3 01年度東京都、02年度和歌山県、03年度広島県などで導入

図表

 一方、後期入試は従来の教育委員会が作成する県下一斉の学力テストが主だが、ここでも都立日比谷高校や八王子東高校などは、全教科で独自問題を課している(※4)。
※4 東京都では01年度から一部進学校において、共通の問題ではなく各高校が独自に作成した問題による入試を実施。04年度は11校、05年度はさらに白 高校、両国高校の2校が実施予定
 岐阜県でも、02年度から前期入試を「特色化選抜」、後期入試を「一般選抜」と呼び、受験機会を複数化した。特色化選抜では、各校が募集に際して「部活動や生徒会活動に積極的に取り組んだ者」など「求める生徒像」を提示する。そしてその生徒像に合う生徒を選抜するために、面接、小論文、実技検査、独自問題などを組み合わせて入試を行う。募集定員も普通科、理数科、英語科が全定員の10〜20%、その他の学科は10〜50%の範囲内で各校が自由に定められる。一方、一般選抜は、従来通りの5教科の一斉学力検査による選抜となっている。なかには学力検査に加えて面接や小論文を課す高校もある。
 千葉県でも03年度から受験機会を複数化した。岐阜県と同様、各校が独自に求める生徒像を示し、選抜方法を設定する「特色ある入学者選抜」を導入。募集定員は全定員の10〜50%の範囲内で自由に設定できるが、上限の50%にしている高校が多く、04年度では全体の約8割を占める。
 このように、前期入試で特色化選抜を実施し、後期入試では基礎学力の到達度で選抜するなど、高校入試は教科学力試験と調査書を中心とする一律的な構成から、求める生徒像に合わせた構成へと変わってきている。この傾向は、大学でAO入試が急速に増えている状況と似ており、大学入試の多様化が高校入試にまで及んでいるともいえる。


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