ベネッセ教育総合研究所
特集 教育の質をどう保証するか
 
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教養教育こそが大学の要

―大学設置・学校法人審議会の学校法人分科会会長の立場からは、答申をどうご覧になりますか。

黒田
 中教審の「審議の概要」と中間報告の間に、設置審の相澤益男会長から意見書が提出されています。その中で法人審査に関わる部分については私の意見もかなり反映されています。私立大学が全大学の4分の3を占める日本の状況から考えても、学校法人が安定的・継続的な経営を行うことは高等教育の発展に不可欠です。従って、学校法人の管理運営体制と財務状況を審査する法人審査はより厳密にし、認可後の学校法人の経営状況に対しても指導や助言をしていく体制の整備を図る必要があるという意見を出しました。

―法人審査では、主にどんな点を見ているのですか。

黒田
 規制緩和によって、実際にはほとんどすることがないというのが実情です。従来の基準だと、設置経費は全額自己資金でまかない、校地面積は校舎面積の3倍の土地を用意しなくてはならないなど、細かな規定がありましたが、今では必ずしも運動場は必要ありませんし、校地面積は学生一人当たり10平方メートルあればよく、校舎面積の基準もどんどん緩和されています。現在の法人審査は、大まかにいえば学校を作るのに全額借入金ではないかどうかだけを審査している状況だといえます。

―特区では、株式会社立の大学も誕生しました。

黒田
 今後の状況次第で、全国で解禁される可能性もあります。学校法人を設立する莫大な資金がなければ学校経営はできないと考えている企業人が多いのですが、現在では学校法人の設立そのものも容易になっています。民間参入のシステムとして学校法人があるのに、なぜ株式会社でなければならないのかと以前から疑問に思っています。

―設置審の審査では「専門学校とどこが違うのか」がよく議論に上ると聞きます。

黒田
 大学と専門学校との最大の違いは教養教育の重視に尽きます。答申でも中間報告にはなかった「教養教育と専門教育のバランス」を謳っています。しっかりとした教養教育こそが、大学に課せられた使命だと思うからです。
 ただ教養教育の中身については、分科会では議論されていません。02年の中教審答申「新しい時代における教養教育の在り方について」をベースとしつつ、日本の伝統や文化を継承していく人材の育成ということを中心にして検討されるのではないかと考えています。
 また専門学校については、今回の制度改正によって総授業時間数が一定の条件をクリアしたところには大学院入学資格が与えられるようになりました。しかし、だからといって大学と同様に専門学校でも教養教育をすべきとは思いません。学校種別に応じた役割があってしかるべきだと思うからです。



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